生命保険とどう違う?「住宅ローン」の頼れる保険「団体信用生命保険」のポイントと選び方をプロが解説!

  • 2023年06月23日更新

こんにちは、ファイナンシャルプランナーの鈴木です。

住宅ローンの借り入れを検討していると必ず出てくる「団体信用生命保険」。

団体信用生命保険は、住宅ローンの契約者が、ローン返済中に万が一亡くなったり、高度障害状態になったりしたときに、ローンの残額を肩代わりしてもらうことができる生命保険の一種です。

この保険があることで、残された家族が住宅ローンの返済で経済的に困窮するリスクを回避できます。
お金を貸す側にとっても、保険会社が残額を保障してくれるので、貸し手と借り手の双方にとって安心できる仕組みになっています。

今回は、この「団体信用生命保険」の仕組みについてご紹介いたします。

団体信用生命保険はふつうの生命保険とどう違う?

団体信用生命保険は、生命保険ですが、一般の生命保険とは性質が少し異なります。
一般の生命保険は、被保険者の年齢や性別等をもとに保険料が決まるのに対し、団体信用生命保険は住宅ローンの残債によって保険料が決まります。保険料は住宅ローン金利に含んでいることが多く、その場合は別に支払う必要はありません。

また、契約者の健康状態が義務づけられている点は一般の生命保険と同様ですが、そのため、健康不安がある人が加入できるように条件を緩和した「ワイド団信」も用意されています。

団体信用生命保険の種類や保障内容

重篤な病気にかかり入院が長期化した場合は、収入が途絶え、医療費をかかえた状態で住宅ローンの返済に手が回らないといったことも十分考えられます。

ほとんどの団体信用生命保険で、保障範囲を死亡・高度障害からさらに広げたプランを用意しています。こうしたプランへは住宅ローンの金利を数%上乗せすることで加入できます。

保障範囲を広げた商品は「○大疾病保障つき」という表現がよく用いられます。そこで、「疾病」が示す具体的な病気をまとめますので、プランを選ぶ参考にしてください。

3大疾病

①がん

日本人のふたりにひとりが罹患するといわれるがん。
団体信用生命保険でも、がんを保障対象とするオプションは非常に多くあります。がんにはいくつか種類があり、対象となるがんや症状が定められています。
上皮内がんや皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がんは対象とならない商品が多いので、注意が必要です。

②急性心筋梗塞

心筋梗塞とは、心臓に酸素と栄養分を運ぶ動脈が詰まって血液が流れなくなり、心筋(心臓を動かしている筋肉)が死んでしまう病気です。

胸が締め付けられるような圧迫感が30分以上続き、発症後適切な処置をしないと死にいたる非常に恐ろしい病気です。死を免れた場合でも手術や入院、通院など長きにわたって治療が必要なケースがあります。

③脳卒中

脳の血管が破れるか詰まるかして、脳に血液が届かなくなり、脳の神経細胞が障害される病気です。
発症から治療までに時間がかかると後遺症が残り、日常生活に支障をきたすことがあります。「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」などは脳卒中の一部です。

7大疾病

3大疾病に以下の4つを加えると7大疾病になります。

④糖尿病

血糖値を下げるインスリンというホルモンがうまく働かなくなり、慢性的に血糖値が高くなる病気です。
糖尿病の恐ろしさは合併症にあるといわれ、代表的なものに神経障害・網膜症・腎症があります。それ以外にも脳梗塞・狭心症・心筋梗塞・糖尿病性壊疸・感染症などがあります。

⑤高血圧疾患

高血圧が原因で心臓に障害の起きた状態を高血圧性心疾患といいます。心臓は高血圧があると絶えず強い圧力をかけて血液を送り出さなくてはならず、やがて心臓のポンプ機能が低下し、心不全を起こすようになります。

初期症状は運動をした時の動悸や息切れ、足がむくむというものですが、病気が進行すると安静時でもヒューヒューと呼吸がなったり、咳、痰、呼吸困難などの心臓ぜんそくといわれる発作を起こすようになります。

⑥肝疾患

肝疾患にかかると、肝臓の重要な役割である栄養分の代謝、有害物質の解毒やエネルギー源の貯蔵などが正常に行えなくなってしまいます。肝疾患には急性肝炎、B型肝炎、C型肝炎、肝硬変などがあります。

⑦腎疾患

腎臓の主な役割は、血液をろ過して、体内で不要な水分や老廃物を尿として排出することです。
腎臓機能が低下する腎疾患では、体内の老廃物を尿中に排泄できなくなって血液中に有害な物質が多くなったり、逆に、体に必要な成分が尿中に排泄されたりします。糖尿病性腎症、腎硬化症などがあります。

腎臓の機能は、一度失われると回復する可能性が低くなり、慢性腎不全といわれる病態に発展します。

10大疾病

④〜⑦に以下の6つを加えたものが10大疾病です。

⑧慢性膵炎(まんせいすいえん)

慢性膵炎は、膵臓が硬くなって機能低下を起こしてしまう状態をいいます。
膵液の分泌や血糖値を調整するインスリンなどのホルモン分泌をする働きが弱まってしまうのです。症状はみぞおちや背部の痛みで始まり、この鈍い痛みが長期間にわたり断続的に続きます。膵性糖尿病を引き起こす可能性もあります。

⑨脳血管疾患

脳血管疾患とは、脳の血管のトラブルによって、脳細胞が破壊される病気の総称です。脳卒中は脳血管疾患のひとつです。手足の麻痺をはじめ、言語障害や視覚障害、感覚障害などさまざまな後遺症の恐れがあり、程度によっては寝たきりになったり、介護が必要になったりすることがあります。

⑩心疾患

心疾患とは心臓に起こる病気の総称です。
心疾患は突然死の原因になることが多く、大変恐ろしい病気です。狭心症や心筋梗塞などの病気が該当します。不整脈や動悸など心疾患の予兆ともなる症状がある場合は注意が必要です。

⑪大動脈瘤および解離

大動脈瘤は大動脈が「こぶ」のように病的にふくらんだ状態を指します。
大動脈解離は大動脈がなんらかの原因で裂けて大動脈内に2つの通り道ができてしまう状態です。どちらも破裂による出血があると人命に危険がおよびます。破裂を防ぐために、生活習慣の改善や定期健診など病気との長期的な付き合いが必要になります。

⑫上皮内新生物

がん細胞が臓器の表面を覆っている上皮内にとどまっているものを、上皮内新生物といいます。
上皮内がんとも呼ばれます。注意点は、団体信用生命保険においては①のがんと区別される点です。上皮内新生物は基本的には手術でとることが可能で、転移がほとんどないと考えられています。

⑬皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がん

悪性黒色腫は、メラノーマとも呼ばれる皮膚がんの1つです。
多くの場合、悪性黒色腫は(1)のがんに含まれます。それ以外の皮膚がんが保障対象になるときは、このような言い方をするのが一般的です。

保険の適用基準は必ず確認!保険の見直しも検討しよう

保障範囲が広がり様々な病気をケアできるのは素晴らしいことですが、適用基準は保険ごとに確認が必要です。

たとえば、生活習慣病は診断だけでは保障対象とはならないことが多く、病気によって就業不能になる、あるいは入院期間が一定日数を超えることで保障対象となります。

保障内容も住宅ローンの残債をなくすもの、月々の返済額の一時的な保障、給付金の支給と様々です。いずれも契約前に十分すぎるほどよく確認しましょう。

また、団体信用生命保険への加入により、住宅費の保障部分がすでに加入している一般の生命保険と重複することになります。

団体信用生命保険への加入は、保険の見直しをするいい機会にもなりますので、生命保険会社や保険の無料相談ショップなどで見直しするところがないか、確認してみるとよいでしょう。

この記事を書いた人
2級ファイナンシャルプランナー
鈴木玲

出版社で5年、Webメディアで10年の勤務後に独立。独立後最初の確定申告で大きくつまづき、以後、本業のかたわら独学で社会保険、不動産、金融等の知識習得に励む。2018年、ファイナンシャルプランナーに。得意ジャンルは不動産で、実生活では中古マンションの購入、リフォーム、賃貸、売却を経験。やさしい日本語でにっぽんの制度や仕組みを説明する「やさしい にっぽん」を企画・運営。ほか執筆記事にパートだから社会保険に加入したくない。【2022年の条件は?】など。

こちらもどうぞ

人気記事ランキング 24時間PV集計
節約・マネー

特集記事

連載記事

こちらもどうぞ