消費増税の延期決定。不動産は今、買いなのか!?
- 2023年06月27日更新
こんにちは、オウチーノの清水です。
このたび消費税の10%への引き上げが、2019年10月に延期されることが決まりましたね。増税が決まれば駆け込み需要などが想定されましたが、それが先延ばしとなった今、住宅購入を考えている人はこの状況をどう捉えればいいのでしょうか?
みずほ証券上級研究員の石澤さんにお話を伺いました!
プロフィール
- みずほ証券上級研究員 石澤卓志さん
- 慶應義塾大学卒業後、1981年日本長期信用銀行に入行。第一勧銀総合研究所上席主任研究員を経て、みずほ証券チーフ不動産アナリストを経て、2014年より現職。
――消費増税の延期は、不動産市場にどのような影響を与えますか?
デベロッパーとユーザーで受け止め方が違います。デベロッパーにとっては、問題点の方が大きいだろうと考えます。
デベロッパーは、駆け込み需要を期待していたところがあったと思います。現在の不動産市場は、マンション供給、売れ行きともに減ってきており、初月契約率が好調ラインである70%を下回っています。おそらく消費増税前の駆け込みを見越して、デベロッパーが供給を先送りにした影響もあったと思います。
消費増税の駆け込みはあくまで「需要の先食い」なので、反動が来ます。トータルで見ると影響は少ないのですが、デベロッパーとしては一時的にはチャンスでもあるので、期待していたのではないでしょうか。
購入者の視点に立つと、マンション供給が減るということは「目玉物件が少ない」と言えます。しかしデベロッパーはいつまでも開発用地を保有し続けるわけにもいかないので、今年後半で供給数は増えるでしょう。昨年は4万戸ちょっとでしたが、今年は4万5,000戸くらいまでいくのではないかと思います。
供給が増えれば好みの物件に出会える確率も増すので、ユーザーにとって良いことです。また、駆け込み需要がないぶん、じっくり物件を選ぶ余裕も出ます。
さらには、消費増税延期は景気対策の一環というところがありますが、政府は住宅マーケットにもテコ入れをするのではと考えています。住宅は個人取引が主体で、減税や住宅ローン金利の低下など政策面の効果が市況に反映しやすいです。また住宅は関連業界が多く、住宅だけですと直接投資額は約15兆円(2014年度)ですが、関連も含めると業界規模46兆円になります。よって3倍の波及効果が見込めるため、景気のテコ入れ策に使われることが多いのです。
例えば、住宅ローン減税が延長・拡充される可能性が高いと思われます。また住宅ローン金利も下がってきているので、購入するうえで良い環境と言えます。
日本経済全般で見ると、消費増税の延期は消費の落ち込みを食い止める効力があるのではないでしょうか。景気全体にとってはプラスですので、住宅の売れ行きや、給与にもプラスに働くでしょう。
――消費増税が実施される予定の2019年10月は、オリンピックまで1年を切っていますね。
東京オリンピックは日本にプラスの影響を与えることでしょう。街のインフラ、交通体系、通信網の整備が進み、交通網で言えば、虎ノ門に新しい駅ができ、都心と湾岸部をBRT(バス高速輸送システム)が結ぶ予定です。現時点では難航していますが、オリンピックが目標となって進んでいくでしょう。
また、日本橋、大手町、虎ノ門などでビジネス需要の拡大を背景に、多数の再開発が動いており、オリンピックを機に不動産投資が活発化しています。他にも八重洲、新橋、品川、渋谷などで、駅周辺への波及効果が大きい開発が多く行われており、こういったところは今後発展可能性が高いだろうと、個人的に考えています。
交通網、通信網の整備、再開発などによって街自体の成長可能性が高まります。これを景気につなげれば、プラスの効果が生まれます。
オリンピックが終わった後は景気が落ち込むとも言われますが、必ずしもそうではありません。これまでの調査によると、ほとんどの都市でオリンピック開催後2年以上にわたり観光客が増えているのです。知名度がアップしますし、ホテルが増えて観光客の受け入れ態勢が整備されることが要因です。観光客が減ったのは北京だけで、それも世界同時不況に重なったためです。東京の場合もプラスの効果が考えられます。
日本は、これまでは情報発信が苦手でした。英語圏でないのも大きいと思います。しかし円安の関係で観光客が増え、口コミで日本の良さが伝わるようになり、さらに観光客が増えました。
例えば今は、通常のホテルだけでなくカプセルホテルの料金までもが上がっているのですが、これは外国人に「日本にしかないから」とウケたからなのです。口コミの力ですね。オリンピックが開催されることで訪日客が増えれば、情報発信が増えると期待できます。
オリンピックは一般論からすると一過性のイベントですが、私は設備投資の期間と考えます。景気を良くする要素は増えますが、活かすかどうかは政府、民間次第と言えます。
現在、日本全体のホテル計画(新・増設)は5万2千室、うち東京は1万3千室です。民泊も検討されていますが、旅館業界の反発が多いようで制約も多くなりそうです。つまり、ホテル不足はこれから先も続きますし、宿泊料金も上がるでしょう。これをどうつなげるか、です。
――今回の消費増税の延期を受けて、不動産購入を考えている方は何に気をつけたらいいでしょうか?
供給数が増えてくると考えられるので、購入のターゲットを明確にすることをお勧めします。エリア的には、不動産価格が相対的に低い城東地区が伸びると考えられます。ただ、居住地としては評価の分かれる地区ですので、ご自身の条件をはっきりさせることが大切です。
また、資金のシミュレーションを立てておくべきです。住宅ローン金利の水準は相当下がってきています。例えば三井住友信託が10年固定で0.4%と、大手銀行でこれは過去に例がありません。ここから大幅に下がることはないと考えます。今の金利水準をもとにシミュレーションすべきでしょう。
住みたい場所、物件のイメージ、資金計画をしっかり練って、ターゲットを明確にしておきましょう。これから供給数が増え、そこに合致する物件が出てくるはずです。
まとめ
住宅購入を考えている人にとっては、今回の消費増税延期はプラスなようです。たしかに、あと数ヶ月で増税しちゃう!となると、本当に必要なタイミングではない時に購入の決断をする人も多くなるように思います。それよりは、豊富な物件のなかから、じっくり選べた方がいいですよね。
これから物件が多く出てくるとのことですので、しっかりと自分が求める条件を定め、お金のこともシミュレーションしたうえで、マッチする住まいを探しましょう!
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