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防災の備えの基本は「死なないための環境作り」命を守る3つのステップ【専門家監修】

  • 2023年06月23日更新

こんにちは、くふうLive!編集部です。
地震対策、防災備蓄、緊急避難時の準備、防災グッズと、これまで4回に渡って、今準備しておきたい防災の備えについてご紹介してきました。

今回は防災とは何か? 何から始めたらいいか? どうやって逃げるのか? といった流れの中で、これまでの内容や正しい「防災の備え」を総まとめ的にご紹介していきます。
教えてくれるのは備え・防災アドバイザーの高荷智也先生。では、防災の備えの基本、総チェックスタート!

「自分と家族が死なないための防災」をテーマに活動しています

監修:高荷智也
ソナエルワークス代表。備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザー。“自分と家族が死なないための”家庭用防災の情報発信と、企業向けBCP策定をテーマとしたコンサルティング活動を行う。実践的でわかりやすく、楽しいアドバイスで人気。メディアにも多数出演実績あり。運営サイト:備える.jp
高荷智也

教えてくれたのは、備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザー 高荷智也先生。

防災対策のスタート地点は避難所生活で役立つグッズをそろえることではありません。聞くべきは生き延びて避難所に来られた人の声ではなく、犠牲となった方の声。
「もしもあのとき○○していたら死なずに済んだ」といった声なき声を想像して、自分と家族の命を守る“死なないための環境作り”を行うことが防災のスタート地点です。

そんな高荷先生が考える、防災の基本と備えの流れとは?

正しい「防災の備え」とは、「死なないための環境作り」をすることから

「レジ袋でおむつが作れるよ」「避難所では○○を持っていくと便利だよ」などなど。

確かに有益な情報ではあるけれど、こうした便利な防災グッズやアイデアを教えてくれるのは、災害で生き延びた人たち。これらの情報を活用するには、まず生きていなければいけません。

防災のスタートは、生き延びた後の避難生活をどうするか?ではなく、まず死なないための環境を作ることから始めなければいけないのです。

【ステップ1】最初にやっておきたい防災への備えは、建物と室内の安全対策

どんなに防災グッズをそろえても、非常食を準備しても、避難する前に建物につぶされてしまっては意味がありません。
まずは建物を頑丈にし、命を守る環境を作りましょう!

住んでいる家の「耐震性」をチェックする

住んでいる家が安全か?大きな地震にも耐えられるか?確認しましょう。

建築確認申請の日付が「1981年6月1日以降」であれば新耐震基準(木造住宅のみ2000年6月1日に再改正)。

旧耐震基準の場合は耐震診断と補強工事をすることをおすすめします。自治体によっては助成制度もあるので調べてみましょう。

ちなみに建築確認申請は築年数(建築日)ではなく、建築確認申請を受けた日のことです。戸建ての場合は建築日より半年前、マンションの場合は1~2年前が目安になります。

転倒、落下、飛散防止。家の中の安全対策をする

住んでいる家の耐震性をクリアしたら、家の中の安全対策をしましょう。

  • (1)家具や家電の固定をする

地震で家具が倒れ、下敷きになってしまったり、避難経路がふさがれて閉じ込められてしまったりしないよう、しっかり固定しましょう。また、棚の中の物、とくに重い物が落下したら危険です。落下・飛び出し対策も同時に行いましょう。

  • (2)ガラスの飛散防止

地震の衝撃、家具が倒れて当たったり、屋外からの飛来物が直撃したりして、窓ガラスやガラス戸、水槽、鏡などが割れることがあります。割れないよう、もしくは割れても飛散の被害が軽くなるよう、飛散防止フィルムを貼るなど対策をしましょう。

⇒詳しくはこちら
防災の専門家に聞いた!今、絶対やっておきたい「地震対策の基本」

消火器・火災報知器を設置&練習をする

地震によって、使用中のガスコンロやストーブから火災が起こることがあります。消防車の到着も遅れる可能性があります。火が燃え移らず大きくならない前に、自力で初期消火することが大切です。

  • (1)住宅用火災報知器の設置は義務

法律により決まっているすべての寝室、階段だけでなく、普段使っているすべての部屋に設置することがおすすめ。10年に1回電池が切れるので、本体ごと交換しましょう。

  • (2)初期消火の方法=消火器が最良

濡れ毛布やタオルをかぶせる方法もありますが、やはり最良は消火器です。住宅用消火器を準備しておきましょう

  • (3)安全マークを取得した消火器を選ぶ

メインの消火器(粉末タイプまたは強化液タイプのもの)は日本消防検定会が検査・認証した検定マーク(写真)が付いているものを選びましょう。
追加でキッチン用に置きたい場合はエアゾール式簡易消火器でOK。NSマークが付いているものを選びましょう。使用期限も必ずチェックしましょう。

  • (4)消火器は一等地に置いておく

いざというときにすぐ手に取って使えるよう、リビングなど家の中の一等地に置いておくこと。キッチンに置く場合は、ガスコンロの奥側に置かないよう注意。もしもコンロから火が出たとき、炎にはばまれて手に取ることができなくなります。メインの消火器をリビングに、ミニタイプをキッチンに置いておくのもいいでしょう。

  • (5)おしゃれな消火器を選ぶのもおすすめ

すぐに手に取れるよう目に見えるところに置いておくためには、インテリアになじむ気に入ったデザインのものを選ぶといいでしょう。悪目立ちするからと奥に追いやられ、いざというときにすぐに取り出せなくなっては意味がありません。

夜間停電時の照明と移動道具「枕元ポーチ」を用意する

夜中に大地震や台風などで停電になり、避難しなければいけなくなった場合、玄関や非常持ち出し袋がある場所まで暗闇の中を歩いていかなければいけません。床には割れたガラスなどが散乱している危険性も。
寝室から玄関まで、安全に移動するために、準備しておきたいのが「枕元ポーチ」です。

枕元ポーチには暗闇を照らすLEDヘッドライトや、手足を守る軍手やスリッパ、助けを呼ぶための笛を、適度なポーチや袋に入れ、大地震でも飛ばされないよう枕元にガッチリ固定しておきます。

▼くわしくはこちら
【専門家監修】今そろえたい「防災グッズ全リスト」緊急避難時・在宅避難時・就寝時の備え

また、このほかに、停電すると自動で点灯するライトをコンセントにさしておいてもいいでしょう。

応急手当と救助の準備をする

大きな災害が起きたときは、発生後3日間は人命救助が優先されます。
生き延びた人への支援は後回しになり、捻挫や軽い骨折ぐらいでは医療機関にかかれない可能性が高いので、最低限自分で処置できる道具(傷パッドや三角巾、包帯、テープ、消毒液、マルチツールなど)は準備し、できれば救命講習などを受けておくといいでしょう。

【ステップ2】避難計画と「非常持ち出し袋」の準備をしよう

建物は無事だった!助かった! 
でも津波や洪水、土砂崩れなどが迫って来て、今すぐ避難しないと命が危ない!もしくはあともう1回大きな地震がきたら家が崩壊するかもしれない……。

こんなときに必要になるのが、避難計画と非常用持ち出し袋の準備です。

ハザードマップを見て、自宅周辺の危険と避難先を把握する

▲東京都千代田区周辺のハザードマップのスクリーンショット
出典:ハザードマップポータルサイト

  • (1)自宅周辺の被害程度を確認する

ハザードマップを見て、自宅のある地域が、どんな災害に遭いやすいのかチェックします。

津波は何分後に来るのか?建物の何階まで浸水する可能性があるのか?土砂災害危険地域なのか?地震によって延焼火災が起こる可能性が高いか?

津波ハザードマップや洪水ハザードマップなど、災害の種類によってハザードマップも何パターンかあります。すべてチェックしておきましょう。

ハザードマップポータルサイト

  • (2)災害種類ごとの避難先を把握する

避難所には「避難場所」と「避難所」の2種類あります。

・避難場所=命を守るために緊急的に避難する場所。災害の種類で変わる
・避難所=災害で命の危険を回避した後、一時的に身を寄せ生活する場所
(この2つは同じ場所の場合もあれば、違う場合もあります)

気をつけたいのは、地図を見て「避難場所」と書いてあっても、必ずしも安全とは言えないという点。災害の種類によって避難する場所が違うからです。

例えば川の近くにある学校は地震のときの「避難場所」もしくは「避難所」にはなるけれど、洪水が起きた場合は避難場所にはなりません。 また、洪水で浸水する河川敷も、地震による延焼火災が起きたときは「避難場所」になり得ます。

ハザードマップをチェックして、災害の種類ごとの避難場所を確認したうえで、もしも自宅に帰れない場合はどの避難所に行くか、確認しておくといいでしょう。

「非常持ち出し袋」を準備する

自宅から緊急避難するときに持って逃げるグッズを入れておくのが「非常持ち出し袋」です。

非常持ち出し袋には、メガネ、補聴器、常備薬、お薬手帳など、それがないと生きていけない、生活できない「体の一部となるもの」と、暗闇を照らすライト、雨具、ラジオ、救急セット、衛生用品、水・食料など「避難をサポートする道具」を入れておきます。

自分が背負って逃げやすいリュックに入れ、玄関もしくは玄関に続く避難経路上に置いておきましょう。

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今日から始める「防災備蓄」と「在宅避難」最新情報

安否確認の方法を家族で決めておく

外出先で災害に見舞われたときのために、家族間での安否確認方法を決めておくのも大切です。

電話やメールや回線が集中してつながりづらくなるので、おすすめはスマホのアプリです(LINEはアプリとして安定性が高いです)。例えば災害伝言ダイヤルが使えるということは、アプリも使える状況ということです。

ふだん使っているアプリで、家族グループなどを作っておくといいでしょう。そのとき「お父さんだけを仲間外れにするなんてことはやめてください!」(by先生)。

【ステップ3】在宅避難のための「防災備蓄」をしよう

災害によって、電気、ガス、水道、流通などライフラインが止まってしまったときのための備えが必要です。

例えば首都直下型地震が起きた場合、停電は1週間継続し、全面復旧には1カ月かかると想定されています。流通も1週間再開しない可能性があります。

在宅で避難生活が送れるよう、1週間分の備えがあると安心です。

用意しておきたい防災備蓄①個別用品

メガネ、補聴器、常備薬など、体の一部となるもの。 おむつなど乳幼児用品や介護用品、ペット用品などは手に入りづらい可能性があるので1~2カ月分準備しておきたいです。

用意しておきたい防災備蓄②インフラ代替品

カセットコンロ、LEDランタンなどのライト、生活用水(1人1日1リットル目安)、中でも非常用トイレは重要。
非常用トイレが使える期間=在宅避難生活が送れる期間になります。

用意しておきたい防災備蓄③生活物資

衛生用品や日用品、飲料水(1人1日2リットル目安)、食料は最低1週間分準備を。その他、給水車から水を運搬するための給水タンクや、消火器、生活費として現金(小銭)も用意しておきましょう。

どれも「日常備蓄(ローリングストック)」として、普段から使いながら備える方法がおすすめです。

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専門家に聞く!今日からはじめたい防災備蓄

日本で楽しく長生きしたいから「備える」

先生はご自身のサイトで、「日本という大好きな国で、家族仲良く長生きして、いろんな未来を体験したい。だけど日本は超災害大国なので、そのために備え・防災が必要」ということを書かれています。また、「防災を長続きさせるには我慢しないこと」、「備え・防災は日本のライフスタイルです」という言葉も印象的です。

もちろん災害は、ときに生命に危険を及ぼす大変恐ろしいものですが、必要以上の恐怖心にあおられて防災をするのではなく、明るい未来のために「備える」、ライフスタイルとして楽しむ姿勢も大事なのかもしれません。

①安全な住環境を作る
②安全な避難計画とそのためのグッズを準備する
③安全・安心な避難生活を送るために物資を備える

の、3ステップを基本に、自分の住んでいる建物や地域の状況を確認しながらしっかり防災し、みんなで楽しい未来を生きましょう!

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9月1日は防災の日。「我が家の防災は大丈夫」と思っていても、備蓄不足や避難ルールの決め忘れなどがあるものです。

防災意識の高い家庭でも見逃しがちなポイントをご紹介しますので、ぜひこの機会に「我が家の備え」を見直してみましょう。

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みんなに聞いた「防災リュックの中身」

この記事を書いた人
ライター
田谷峰子

主婦向け生活情報媒体をメインに、ときどき旅記事なども執筆。
日々の生活を楽しく豊かにハッピーに送るためのヒントをお届けしていきます。

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