長年の悩みから救われた【釈迦の言葉】とは?「前向きに生きる」に疲れたら読みたいヒント
- 2022年03月25日公開

こんにちは、ヨムーノ編集部コラム担当です。
長年にわたり、人の悩みやつらさと向き合ってきた禅僧が、うまくいかない現実・自分を受け入れ、どう生きていくかという、まったく別の視点からのリアルなメッセージを伝えてくれます。
ここでは、青森県恐山菩提寺院代(住職代理)、福井県霊泉寺住職の南直哉(みなみ じきさい)著書『「前向きに生きる」ことに疲れたら読む本』(アスコム)から一部抜粋・編集してご紹介します。
「生きる意味」は見つけなくてもいい
「意味のある人生」や「有意義な人生」を送らなければと、肩ひじ張らなくても大丈夫。生きる意味など探さなくても、人は十分幸せに生きていけます。
私にとって、「自分とは何か」と問うことは、ずっと心のど真ん中に居すわり続けていた問題でした。
なぜ私が、このように「自分」の存在について考えるようになったのか。小児ぜんそくで、幼い頃から入退院を繰り返してきたことが大きかったかもしれません。
激しい発作に襲われると絶息状態に近くなり、目の前が真っ赤になります。そんなとき、子ども心に「もう、死ぬのかな」と何度も思いました。これから何が起こるのかわからない恐怖と感覚。それを、今も鮮明に覚えています。
自意識の固まらない3歳頃からそのような体験を繰り返してきた私にとって「生」よりも「死」のほうが圧倒的にリアルだったのです。
学校へ上がっても授業を休みがちで何ごとも人より遅れます。
自然に周囲との距離が生まれ、冷めた目で友だちや教師を見ているような子どもでした。
そんな自分の中には、「これが自分だ」「これが生きていることだ」と言えるような確固たる実感が何もありません。
「なぜ生きねばならないのか」「自分とはなんなのか」。それは、子どもとはいえ切実な問いだったのです。
強烈な不安を決定づけた体験
そのような子ども時代生きることへの強烈な不安を決定づけた体験があります。
小学校低学年の頃、週に一度の通院を翌日に控えた日の夕方でした。帰宅して、「明日は病院か」と思ったとき、なぜ母は自分を病院に連れて行ってくれるのだろうと、ふと疑問に思ったのです。
もし、「お母さんは、明日あなたを病院に連れて行くのは嫌だからね」と言われたら自分ひとりでは通院できないし困るなと、私は子ども心に考えました。
そして、思いました。
「それにしても、なぜあの人は僕の親なんだろう。『あんたの親は、もうやめた』と言われたらどうすればいいんだろう」そう考え始めると、止まりません。
本当は世の中はすべて、単に「約束事」で成り立っているだけで、誰もそれに気づいていないから平気で普通に暮らしているだけなのではないか.....。
こう気づいたとき、言いようのない怖ろしさが襲ってきました。それは今まで生きていた世界が、一気にひっくり返ってしまうと感じるほどの怖さでした。
以来、その恐怖は生きることに対する根深い不安となって、心の中に居すわるようになりました。
思春期になってもその感覚が去ることはなく、当時の私は、今思ってもかなり切羽詰まった状態にありました。
なぜ生きているのか、自分というものの意味はなんなのか。
手当たり次第に本を読み、思案を巡らせ、「これは」と思う人に訊ねました。
しかしどの大人も、どの書物も、納得できる答えはくれませんでした。
平家物語の一文「諸行無常」
そして中学3年生のとき、教科書にあった平家物語の一文にある「諸行無常」という言葉に出会ったのです。
一般的に言えば、この「諸行無常」とは、「この世のすべての物事は変化していく」ことだと解釈されます。
しかし、私が感じ取った意味は違います。
生きること自体に意味などない。
自分の存在には確かな根拠がない。
人の存在には確固たる根拠などない。
2500年前に釈迦が残したこの言葉は、そう教えてくれました。
このとき私は、「助かった!」と思いました。なぜかと言えば、少なくともここに、自分と同じ苦しみを抱える人がいたのだと感じたのです。
人は、自分で望んだわけでもないのに生まれてきて、なんの根拠もない人生を生きていかなければならない。そのやるせなさや悲しさを抱えて生きていくのだと、私に教えてくれたのは釈迦の人でした。
生きることに意味がないとは、救いのない言葉だと思うかもしれません。
しかしそうわかれば、「意味のある人生」や「有意義な人生」を送らなければと、肩ひじ張ってがんばらなくてもよくなります。
「生きる意味を見つけなければ」とやっきになる必要もありません。
実際、そんなものはなくても生きていけるのです。
現に、生きる意味などわからなくても、みんな立派に生きています。
でも、どうしても人生の意味を考えてしまう。
それらしい人生訓を語られても、腑に落ちない。そんな人もいます。
その人が、世の中には今の自分の視点だけではない別の見方があると気づけば、今まで見ていた景色がガラッと変わります。それを提供できるのが仏教です。
一切皆苦
「一切皆苦(いっさいかいく)」という言葉が、仏教にあります。
この世のすべては、「苦」である。
釈迦は、そう見抜きました。
実際、世の中には嬉しくて楽しいことよりも、せつなくてつらいことのほうが多いのです。だから、人生が「苦」であることも、生きることが居心地が悪いのも当然でしょう。
そんなに斜に構えず、もっと楽しく生きればいいじゃないかと思うかもしれません。しかしこの視点で物事を見ると、ある人たちにとっては、強烈な救いになることがあるのです。
それは誰か。「人生とは苦しいものではないのか」「自分とは、もともとダメな存在ではないのか」と薄々感じていた人たち。
「夢は努力すれば叶う」といった物語に乗れない人たち、自分のどうしようもなさにうんざりしていた人たちです。
自分の生きづらさを無視できない――そんな人たちは、仏教に触れて、自分の存在はしょせん「たまたま生まれてきた借り物」にすぎないとわかると、「やっぱりそうか!」と納得するのです。
その借り物である自分を引き受け、どうにか元気づけ、大丈夫だと励ましながら、人生を終えるその日までこの世を渡って行く。
この世間を生きていくには、そういう方法だってあると私は思います。

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