【SDGs】漁網の「海洋プラスチック問題」をリサイクルで解消!北海道発”地産地消”で目指す鈴木商会の新挑戦

  • 2022年08月27日公開

こんにちは、くふうLive!編集部です。

先日、コロナが落ち着いたタイミングで、本当に久しぶりに、北海道へ出張に行ってきました。
北海道といえば…はずせないのが、海鮮グルメ!
ウニやカニ、ホッケにイクラにホタテ…ああ、妄想するだけで太りそうです(笑)。

実は、北海道の水産物水揚げ量は日本1位。全国の2割を占めているんですね。
海鮮グルメの充実っぷりにも納得がいきます。

さて、そんな漁業が盛んな北海道ですが、漁業に欠かせない“漁網”の廃棄が大きな課題になっていることを知っていますか?
最近耳にすることが増えた「SDGs」。世界的目標指標とされているこの観点からも、海洋プラスチックの問題は大きな課題となっています。

今、これまで実現困難と言われ、日本でもまだ珍しい「漁網リサイクル」事業を通して、北海道から海洋プラスチック問題に挑んでいる会社があります。

突撃取材でわかった実際の現場と、関わる方たちの想いと。
「鈴木商会」の取り組みをご紹介します。

【海洋プラスチック】漁業に欠かせない「漁網」の廃棄が大きな課題に

漁業で使われる「漁網」とは、その名の通り「魚介類を捕獲するために用いる網」のこと。 漁業関係者はほぼ毎年1回漁網を買い替えており、その度に水産廃棄物として処理されています。その量はなんと、1年間で1,500〜2,000トン!

リサイクルは困難!ほぼ埋めるか燃やしている現状

道内の漁業関係者は、この大量の漁網処分に悩まされています。廃棄する際の選別・分別の方法が難しく、また技術的な課題などからリサイクルが困難なため、その60%以上は「埋立」、残りは「焼却」などで処分されてきました。

埋立地には限りがあるため、まずは捨てる量を削減することが今後の課題。また、焼却による環境への負荷を減らすために、「リサイクル」を進めることも重要になってきます。

漁業の持続的な継続のためにも環境負荷低減のためにも、廃棄漁網問題への取り組みはまさに急務!

長年の課題を創業70年の実績で解決!鈴木商会の「漁網リサイクル事業」

「リサイクルの力で、海と漁業を守りたい」。
そこで立ち上がったのが、今年で創業70周年を迎える株式会社鈴木商会(以下、鈴木商会:どんな会社なのかはこちら)。

長年のリサイクル事業で培ってきた技術と経験を活かし、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」を踏まえた新プロジェクトを2022年初頭から始動! それが「漁網リサイクル事業」です。

「漁網リサイクル」を実現するとともに、再生した新たな商品へ生まれ変わらせ「資源として活用する」までを目指しています。

この新事業の全貌を知るため、筆者は北海道苫小牧市にある工場「苫小牧プラ・ファクトリー」を直撃取材。困難を可能にした、鈴木商会の漁網リサイクルの現場に迫ります!

【独占取材】現代の錬金術!?北海道初の漁網リサイクル「苫小牧プラ・ファクトリー」に潜入!

さて、こちらが「苫小牧プラ・ファクトリー」。次のような工程で漁網リサイクルを実現しています。

  1. 道内各地の漁業者から漁網を回収
  2. 回収した漁網の下処理
  3. 切断・洗浄・乾燥・粉砕
  4. 漁網片を溶かして固め、カット

工場長・熊谷さんのご案内のもと、いざ潜入! それぞれの工程を順番に見ていきましょう。

1)道内各地の漁業者から漁網を回収

まずは、北海道内の漁業者から役目を終えて廃棄となった漁網を回収します。 私たちに海の幸を届けるため、雨の日も嵐の日も荒波に揉まれてきた漁網たち…感謝です!

前述の通り、年間で2,000トン近い廃棄漁網が発生するため、回収作業だけでも大仕事! 再生資源に生まれ変わる元なので、廃棄品といえど一つ一つ大切に回収・保管されています。

2)回収した漁網の下処理

回収した漁網は、リサイクルする前にしっかりとした下処理を行います。

まず、ホタテなどの貝殻やヒトデなどの海洋付着物をはじめ、漁網に絡まる様々な不要物を取り除いていきます。

この下処理は非常に重要! しっかり不純物を分離して「廃漁網だけ」の状態に。 品質の高い再生素材を精製するために、高い精度が求められるのです。

色もサイズも異なる漁網。こうしてみると、たくさんの付着物がありますね。

そして、この下処理はなんとすべて手作業で行われています!

てっきり全て機械が行うものと思い込んでいたので、思わず「ウソでしょ!?」と驚きの声を上げてしまいました。
漁網に絡まった様々な付着物は、人の手でなければ取り除くことはできないのだそう。

付着物を一つひとつ除去していくのは、機械化できない繊細な作業。 間近で見ると目の細かい漁網に複雑に付着した不純物は本当に頑固で、この作業は想像以上に大変です。

これはもはや職人レベル…!

リサイクルに欠かせないとはいえ、丁寧かつかなりの根気を必要とする工程に、のっけから驚かされます。

こうして見ると、ちょっとかわいい付着物ですが、実際に除去作業をしていると「取れない~!がっつりひっついてるよぉ…」と可愛さ余って憎さ100倍っていう(泣)。

3)切断・洗浄・乾燥・粉砕

付着物を取り終え、きれいになった廃漁網たち。処理しやすいサイズにするため、細かく切断していきます。

色とりどりの廃漁網を細かく切断すると、こんな感じになります!

海の塩分や汚れが残っているため、しっかり洗浄!純粋な漁網片に仕上げたら、しっかり乾燥させます。

さらに、乾燥させた漁網片をもっと細かく粉砕します。 なんとその際、金属探知機を用いて徹底的に不純物を除去していくそう!

え~、そこまでやるんですか!?その念入りっぷり、頭が下がります!

4)漁網片を溶かして固め、カット

不純物を完全に取り除いたピュアな漁網片を、高熱でどろどろに溶解します。

ところてんのように押し出された再生素材を水に潜らせて洗浄すると、パスタ状に固まります。 いよいよ素材が形になってきました!見ている筆者もテンション上がります♪

これを2~3ミリの大きさにカットすると…。

廃棄された漁網をリサイクルした再生素材「ペレット」の完成です!

精製したペレットは、提携するリファインバース株式会社が製造する再生ナイロン樹脂「REAMIDE®(リアミド)」としてアパレルメーカーなどに販売され、バッグや衣料品などさまざまな製品の原料として活用されます。

あの、色も大きさもバラバラだった廃漁網たちが、いろいろなアイテムに! 廃棄されたものが、世の中に役立つものとして再利用されていくと思うと、感慨深いものがありますね!

廃棄物に付加価値を与える「新たなリサイクル」のカタチ

廃棄処分された漁網をペレットへと資源リサイクルするだけでなく、ペレットを原材料に様々な製品作りに繋げるこの事業は、まさにリサイクルの「その先」。

熊谷工場長によると、今後は北海道内全ての漁網の処理をまかなうことを目指しているそう。 さらには、漁網以外の漁具など海に関わる廃材の幅広い再生利用を視野に入れているとのこと!

近い将来、例えば「廃漁網から作られたシャツ」が珍しくなくなり、さらに幅広いモノづくり領域に広がっていくかもしれませんね。

【海洋プラスチック問題解決に向けて】鈴木商会が手掛けるリサイクル事業

鈴木商会が今まで困難とされていた廃漁網のリサイクルを実現できた背景には、昭和28年の創業以来約70年にわたり取り組んできた、「リサイクル事業」の実績があります。

現在、鈴木商会で主に手がけているのは、こちらの事業。

  • 家電・自動車リサイクル
  • 産業廃棄物・金属スクラップ等の資源リサイクル
  • アルミ精錬事業

こんなの見たことない!「アルミリサイクル」工場見学レポもぜひご覧ください!⇨こちら

身近な家電や車から、金属まで、役割を終えたモノを再生し、再び必要とされる価値を生む。

私たちが毎日何気なく「捨てる」ものを「使う」ものに変えているんですね。 これらの事業を通じ、海洋プラスチック問題の解決をはじめとした「持続可能な社会」づくりに力を注いでいます。

代表取締役社長・駒谷氏の想い〜「地産地消」と「環境製造業」で北海道をリサイクル先進地に〜

「北海道を、環境リサイクル分野の先進地域にしたい」と熱く語る代表取締役・駒谷僚氏。
そのためには、「地産地消」と「環境製造業」2つのキーワードが重要だと言います。

「鈴木商会の取り組みを通じて、社会全体に、ゴミは『捨てる』ものではなく『リサイクルする』ものという意識を根付かせていきたい。まずは、地域で出たゴミはその地域でリサイクルする『地産地消のリサイクル』の実現を目指します。」

その一例がコレ!

ビッグボス降臨で話題のプロ野球チーム「北海道日本ハムファイターズ」の試合会場で、来場者からいらなくなった古着を回収。クッション材にリサイクルして、オリジナルグッズの観戦用クッションに再生・還元しました。

こ、これは欲しい!

その他、自動車の廃棄ガラスから北海道の名産品「小樽グラス」の原料を精製するなど、リサイクルを通して幅広い地域貢献を目指しています。

「現在では再生困難な素材も、もっともっと再生利用可能にしていきたいですね。 ゆくゆくは、リサイクル素材を使った商品を製造し、専門に取り扱う『資源循環型製造業』が理想です。」

不要になったモノから、魅力的な商品がどんどん生まれる世界。
誰もが安全で安心なだけでなく、暮らしが楽しく豊かになる、そんな循環が当たり前になったら本当に素敵ですね。

私たちが今日からできるSDGs【北海道グルメから海洋プラスチック問題を考える】

今回は、従来では困難とされていた漁網リサイクルを実現した「鈴木商会のSDGs取り組み事例」をご紹介しました。

北海道グルメをはじめ、私たちを楽しませてくれる美味しい海産物。
漁業の現場では、廃漁網が環境問題になっているなんて、普段の暮らしの中ではなかなか気づくことはできませんでした。
筆者も、海鮮好きとして思い至らなかったことに反省…。

大切なのは、まずこういった情報を知ること、そして自分の頭でしっかり理解し考えること!
持続可能な社会の実現に向け、普段何気なく使っている・食べているものの成り立ちを意識できるといいですね。

そして、鈴木商会の漁網リサイクルの事例を元に、リサイクルの新しいカタチや大切さを知り、私たち一人一人が「今日からできること」は何かを考えてみるきっかけにしたいと思います。

撮影/井上源太郎

取材協力/株式会社鈴木商会  

この記事を書いた人
ヨムーノ 編集部

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