最新路線価でサザエさん一家の相続事情を推測 土地の課税評価額は1億4823万円。でも、相続税額は0円!?

  • 2021年03月22日更新

以前なら「一般庶民には関係ない」と思われた相続税も、2015年1月の相続税改正や景気回復傾向に伴う都市部での地価上昇で状況は変わりつつあるよう。ほのぼのと暮らす庶民派の代表“サザエさん一家”も例外ではない。7月1日に発表された最新の路線価をもとに、磯野家の土地の評価額と相続税額を試算してみた。

庶民的な暮らしに反し、磯野家の土地の課税評価額は1億4823万円

相続税額を算出する基準になるのが、国税庁が毎年7月に発表する路線価で、市街地の道路に面する土地1平米あたりの価額で示される。まずはサザエさん一家の土地の評価額はいくらか、最新の路線価に基づいて試算してみよう。

磯野家の土地の課税評価額

前提となる磯野家の土地面積は、間取りなどから判断して300平米ほどとの見方が一般的。諸説ある住所のうち実在する「東京都世田谷区新町3-515」を現在の住所に置き換えると「桜新町2-25」となり、2015年データによると玄関がある東側道路の路線価は48万円だ。
注意したいのが、磯野家は勝手口がある北側も道路に面する「角地」ということ。そちら側の路線価は47万円。一般的に土地の評価額は「路線価×面積」で計算するが、土地の形状や道路状況の良し悪しに応じて加減する。
「奥行価格補正率」は、奥行が浅すぎたり深すぎたりすると評価額を減額するというもの。普通住宅地区なら奥行10m以上・24m未満だと補正率1.00(補正なし)なので、磯野家の土地が東側約20m×北側約15mと考えるなら2面ともその範囲内に該当する。一方、磯野家のように便利な角地には「側方路線影響加算率」として、側方路線価の3%(普通住宅地区の場合)を上乗せする。
これらを基に計算すると、磯野家の土地の課税評価額は、1億4,823万円。磯野家は思いのほか資産家であることが判明するのである。

計算式は以下の通り。
①正面路線価48万円×奥行価格補正率1.00+側方路線価47万円×奥行価格補正率1.00×側方路線影響加算率0.03=49万4,100円(1平米単価)
②49万4,100円×土地面積300平米=1億4,823万円(土地の課税評価額)

自宅であることと子だくさんが幸いし、相続税額はゼロ!?

このままでは波平が亡くなると相続税が高額になるものの、被相続人(波平)が自宅として住んでいた家が建つ土地については、一定要件を満たせば「小規模宅地等の特例」で80%もの評価減に。対象面積は2015年から上限330平米に引き上げられ、磯野家の土地もすべてが特例の対象となる。
特例を含め計算したのが以下だ

磯野家の相続税額の算出方法

③1億4,823万円×20%=2,964万6,000円(特例適用後の土地の課税評価額)。また、2015年1月に施行された改正相続税法により、法定相続人の数に応じた基礎控除額が従来の6割水準へ。2世帯7人家族の磯野家のうち、波平が亡くなったときの法定相続人は、妻のフネと、夫妻の子であるサザエ・カツオ・ワカメの4人。
相続税には「基礎控除」と呼ばれる、相続税の課税対象から除外される金額が設定されている。現在の基礎控除額は、定額控除3,000万円+法定相続人比例控除600万円×相続人の数】で決まる。

磯野家の4人の相続金額は以下の通り。
④3,000万円+600万円×4(法定相続人の数)=5,400万円(基礎控除額)
上記③の土地の評価額が④の基礎控除額内に収まるため、磯野家の相続税は0円ということになります。ちなみに建物は古く、資産価値はないとみなして問題ないだろう。
仮に相続税が発生するとしても、フネに対する課税は配偶者の税額軽減で相殺され、カツオとワカメは未成年者の税額控除が受けられるので、それほど大きな負担にはならないかもしれない。
とはいえ、波平が預貯金などでそれなりの財産を所有していたり、さらなる地価高騰が進んだりすると安心はできず、波平が退職金を手にすると相続税の課税対象になる可能性が高まる。
磯野家の簡易シミュレーションではこのような結果になったが、実際の相続となると、そう簡単にはいかない。2015年の相続税の改正後、節税のため手持ちの土地など不動産活用の検討を始めた人も多いと思うが、漠然としたプランはかえって失敗のもと。大切な財産を守ると同時に、いっそう価値を高められる最善策について考えてみてはいかがだろうか。

この記事を書いた人
ヨムーノ 編集部

「くらしをもっと楽しく!かしこく!」をコンセプトに、マニア発「今使えるトレンド情報」をお届け中!話題のショップからグルメ・家事・マネー・ファッション・エンタメまで、くらし全方位を網羅。

こちらもどうぞ

人気記事ランキング 24時間PV集計

特集記事

連載記事

こちらもどうぞ