塩分の摂りすぎは良くない!?「血圧のスペシャリスト」が気になる症状と8つの対策を解説!

  • 2023年06月27日更新

こんにちは、くふうLive!編集部です。

私たちの体に「塩分」は欠かせないものです。
最近は、“塩分の摂りすぎ”への関心が高まっており、“減塩”の醤油や味噌汁なども浸透してきました。

でも、どんなに“塩分の摂りすぎは体に良くない”と分かっていても、塩分摂取量をコントロールするのは難しいもの。健康を維持するために、塩分と体の関係を知り、食生活を見直してみませんか?

今回は、塩分の適正な摂取量や、塩分の摂りすぎを防ぐ方法について、医学博士の渡辺尚彦先生に伺いました。

【監修者紹介】 渡辺尚彦[ワタナベヨシヒコ]

医学博士。東京女子医科大学東医療センター元教授、愛知医科大学客員教授、早稲田大学客員教授、日本歯科大学臨床教授、聖光ヶ丘病院内科医師。高血圧を中心とした循環器疾患が専門で、「ミスター血圧」として多数のメディアに登場。1987年から自身の腕に血圧計を装着開始して以来、24時間365日、血圧を測定し続ける。
渡辺尚彦

そもそも塩分って、私たちの体になぜ必要なの?

私たちの体の中には、一定の割合(0.85%)で「塩分」が含まれていると言われています。この「塩分」とは、ナトリウムと塩素が結びついた「塩化ナトリウム」のこと。

塩の成分であるナトリウムは、タンパク質や脂肪と並んで、生命の維持に直結する大切な役目を果たしています。タンパク質や脂肪が体を動かすエネルギー源になるのに対し、ナトリウムは、体内の様々なシステムのはたらきを守り、維持するのに役立っています。

塩分は、私たちの血液や消化液、リンパ液などの、いわゆる体液に溶け込んでおり、その中で、細胞内外の体液の圧力(浸透圧)を調整し、細胞のバランスをとっています。中でもナトリウムは、脳からの命令を電気信号として神経細胞に伝える大切な存在でもあります。

また、体が酸性になるのを防いだり、消化と吸収を助けたりと、まさに塩分は、生命維持のために無くてはならない重要な存在。“摂りすぎ”は良くないけれども、私たちが生きるために必要な成分なのです。

※参考:日本海水公式HPより

塩分を摂りすぎると、体の中で何が起こるの?

塩分の摂りすぎで起きる体内のメカニズムは、まだ十分に解明されていません。しかし、塩分の過剰摂取は「高血圧」を招くことが分かっています。

血圧の上昇には、塩分の摂りすぎによって血中のナトリウム濃度のバランスが崩れることが関係しています。

私たちの体内では、「浸透圧」という力が働いて、体液の濃度が一定に保たれています。
「浸透圧」とは、生物の体内で濃さが違う2つの液体が、細胞膜を隔てて接している場合、薄いほうから濃いほうに水分が引っ張られる力のこと(キュウリの薄切りを塩水に浸けると、キュウリの水分が出てしんなりするのもこのはたらきですです)。

塩分を多量に摂取すると、血液中の塩分濃度が高くなるため、浸透圧のはたらきで、血管内に体内の水分が多量に取り込まれるようになります。その結果、体内を循環する血液量が増え、細い血管の壁にかかる抵抗が高くなり、血圧が上昇すると考えられています。

具体的な症状は?

①のどが乾く・頻尿

血液中のナトリウム濃度が高くなると、それを薄めて比率を正常に戻そうとして水分が必要となり、のどが渇きます。その結果、水分を大量に摂ることとなり、トイレが近くなります。

②むくみが起きる

血中のナトリウム濃度が高くなると、血液の浸透圧も上がります。それを適正な濃度に薄めようとして、あらゆる体の組織(細胞)内の水分が血液中に移動し体液量が増えるため、手足を中心に体全体がむくみやすくなります。

塩分の多い食事×飲酒は、脱水症状を悪化させることも......!

塩分の多い料理を食べるとのどが渇くため、ついお酒が進みがちです。
アルコールには利尿作用があるだけでなく、アルコールに含まれるアセトアルデヒドを分解するために体内の水分が奪われ体外に排出されるため、お酒を飲むと体から水分が失われます。

特にビールは利尿作用が強く、1リットルのビールを飲むと1.1リットルの水分が出ていくと言われています。

おいしい「焼肉」と、キンキンの「ビール」を想像してみましょう。
塩分の多い焼肉のタレに、冷えたビールはよく合いますよね。でも実は、この組み合わせはちょっぴり危険!

塩分の大量摂取で血中の塩分濃度が高まった状態に、アルコールを摂取すると、濃度調整やアルコール分解のために大量の水分が使われて、不足するという事態が起こります。

すると、脳など重要な部分を守るための体の防御反応として、細胞から水分が奪われ、脱水症状が起こることもあります。こうした体内の塩分濃度のバランスが崩れると、ひどい場合には頭痛や嘔吐、けいれんなどを伴う高ナトリウム血症が起こることも......。塩分の濃い食事とアルコールの組み合わせには、注意が必要です。

お酢活用で簡単!塩分摂りすぎ予防法はこちら

適切な塩分の摂取量はどれくらい?

1日の塩分摂取量の目安は7〜8g

厚生労働省が「望ましい」としている塩分摂取の目標値は、どれくらいなのでしょう?

日本人の食事摂取基準は、18歳以上の男性で8g未満、女性で7g未満となっています(※1)。米国心臓協会(AHA)のガイドラインでは6g未満、日本高血圧学会でも1日6g未満を推奨。

世界保健機関(WHO)では,すべての成人の減塩目標を5gに設定しています。つまり、日本の塩分摂取量の目標となる目安は、世界的に見ても、かなりゆるめなのです。

※1:日本人の食事摂取基準(2015年度版)より

日本人の平均塩分摂取量は、基準オーバー

国立循環器病研究センターによると、日本人の食塩摂取量は世界的に見ても多く、必要以上に塩を摂っている人が多いことが分かっています。

世界的な基準と比べると、ゆるめの目標設定にしているにもかかわらず、日本の男女の平均塩分摂取量は9.9g(男性の平均は10.8g、女性は9.1g)と、目安摂取量をオーバーしているのです(※2)。

※2:平成29年国民健康・栄養調査報告(P66)

塩分の摂りすぎを防ぐために

「ミスター血圧」が教える"減塩"必勝メソッドとは?

外食時の塩分過剰摂取に十分に気をつける

日本人が塩分を摂りすぎる最大の要因は、醤油を使った料理が好まれることにあります。また、最近の傾向としては、外食の機会が多いこと、そして塩分の多い加工食品の占める割合が大きくなっていることもあげられています。

日常的に、外食に舌が慣れてしまうと、塩分への感度が鈍くなり、自分が塩分を多く摂っていることに気づきにくくなります。例えば、ラーメンの麺を食べた後に、スープを飲んでいる人も多いのではないでしょうか。

実は、ラーメンのスープたった1杯で、1日の目標摂取量を軽く超える10g近い塩分を摂ってしまいます。

加工食品は「塩分相当量」をチェック!

ハムやベーコンなどの肉の加工食品は、保存性を高めるために多くの塩分が含まれています。栄養成分の欄にある「食塩相当量」をチェックし、なるべく塩分量が多いものは避けましょう。

ここで注意したいのは、食品の塩分表示がナトリウム(Na)で示されている場合。ナトリウム量=塩分量ではなく、ナトリウム表示の数字は塩分換算すると2.5倍になります。

「酢」やハーブ、スパイスなどを取り入れる

味付けに「酢」を加えると、塩分が少なくても薄味に感じにくいことが、ミツカンと和洋女子大学・畑江敬子教授が行った共同研究で実証されています(2006年)。

食塩濃度0.6%と0.8%の食塩水溶液の味を比較すると、前者は明らかに塩分が薄いことがわかりますが、塩分濃度が薄いほうに食酢を添加(カップ1杯に対して小さじ1程度)すると、味の差が分からなくなりました。カップ1杯に10滴程度という隠し味程度の食酢でも、同じような効果があることも確認されています。

また減塩した料理にブラックペッパーやカレー粉をプラスしたり、唐辛子で辛みをつけたりと、ハーブやスパイスで香りや辛味をプラスすることでも、味の物足りなさを補うことができます。

参考:ミツカン「塩味と酸味のいい関係 食酢の減塩効果」

料理にだし汁を取り入れる

こんぶや鰹節、煮干しなどから、うま味のしっかりとしただし汁をとり、料理に使いましょう。だし汁は、塩分が少なくてもおいしく食べられるため、減塩につながります。ただし市販のだしの素には塩分が多く含まれているものもありますので、表示を確認して減塩のものを選びましょう。

薬味を使う

私たちが感じる「味」は、実はほとんどが「香り」だと言われています。そのため料理をネギやニンニク、生姜、青じそなどの薬味の香りをプラスすることで、味の薄い料理も、物足りなさを補うことができるのです。

できるだけ素材の味を活かし、味噌・醤油を使いすぎない

調味料に含まれる塩分の量は、塩>醤油>味噌>ソースです。小さじ1杯の塩に含まれる塩分だけで6g。ほぼ1日の摂取目標量に達してしまいます。素材の味を活かすことを心がけ、できるだけ薄味で調理するようにしましょう。

“減塩”の調味料を選ぶ

最近は「減塩」の調味料がたくさんあります。普段の料理に、そういった調味料を選んでみましょう。

カリウムを含む食品を摂取する

カリウムには、体内のナトリウム濃度が高くなり過ぎた時に、尿からカリウムを排出させるはたらきがあります。塩分を摂りすぎたと感じた時には、カリウムを多く含む食品を摂ると効果的です。

カリウムは、野菜や果物、海藻などに多く含まれています。野菜なら芋類が調理で壊れにくいカリウムを特に多く含んでいます。カリウムは水溶性なので、こうした芋類を煮汁ごといただくメニューがおすすめ。果物ならバナナ、アボカドなどに多く含まれています。

ただしカリウムは、多く摂ったとしても一定量以上は排出されてしまいますので、こまめに摂ることが大切です。

最後に!「減塩チャレンジ」成功のポイント

「血圧が高めだけど、3食とも薄味の食事は耐えられない......」
そんな方はまず、朝食だけでも薄味にしてみましょう。多くの高血圧患者の減塩に成功してきた渡辺尚彦先生によると、減塩による血圧降下作用が最も大きいのは「朝食」。これは、起床前後にナトリウムを体に貯め込む作用のあるホルモンがたくさん出るためです。

たとえば、塩分の多い食品を使った「和朝食」を、減塩のメニューに置き換えることが効果的なのだそうです。

特に渡辺先生のおすすめは、フルーツグラノーラと牛乳(もしくはヨーグルト、豆乳)の朝食。ご飯に味噌汁、梅干し、塩鮭、冷奴といった典型的な和朝食だと、一食で9gもの塩分を摂ってしまいますが、フルーツグラノーラと牛乳なら塩分は0.5g程度に抑えられるため、昼食と夕食である程度の塩分摂取も可能。

しかも、朝食で減塩することで、その後の血圧が安定する傾向にあります。

まとめ

いかがでしたか?
私たちは普段、どれくらいの塩分摂取量が体に良いのか、悪いのか、意外と知らずに生活しています。

目標とされている塩分摂取量は、実は予想以上に少ないのです。一方で、普段の食生活では、ラーメンや焼肉、スナック菓子など、“おいしい”と感じる料理ほど、塩分過多になりがちに。

ずっとおいしいものを食べ続けられる健康な体を維持するために、まずは自分に合った塩分コントロールの方法を身につけましょう。

お酢活用で簡単!塩分摂りすぎ予防法はこちら

「ミスター血圧」が教える減塩メソッドとは?

【参考文献】
『血圧を下げる最強の方法(アスコム)30年間×24時間 自分の血圧を測り続けている専門医だからわかった正しい降圧法』(渡辺尚彦著)
『高血圧をもっと下げる新常識(笠倉出版社)』(渡辺尚彦著)
『誰でもスグできる! 血圧をぐんぐん下げる 200%の基本ワザ(日東書院本社)』(渡辺尚彦著)

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この記事を書いた人
ヨムーノ 編集部

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