路上園芸の立役者、狸の置物を鑑賞する

  • 2023年06月27日更新

こんにちは。まちかどのゲリラ的園芸活動をひそかに愛で見守る「路上園芸学会」会長の村田です。

ライター

路上園芸学会 会長 村田
街角で営まれる路上園芸に魅了され「路上園芸学会」名義でSNS等で細々と魅力を発信。植物への興味が尽きず園芸装飾技能士の資格も取得。人の手を離れオバケ化してしまった植物を見るとつい興奮。『街角図鑑』(三土たつお編著・実業之日本社)に路上園芸のコラムを寄稿。図画工作作家の木村りべか、写真家の中島由佳が結成した庭先系アートユニット「庭先PT」に新メンバーとして加入。
村田

ハロウィンのかぼちゃにサンタ、小人、ディズニー、犬、七福神。路上園芸の世界では、実に様々なキャラクターたちが植木鉢の周辺を彩っています。植物だけの空間に世界観や物語を生み出す、これらのキャラたち。

数多のキャラの中でも、とりわけおなじみなのは、狸の置物です。今回は、路上園芸を彩る名脇役・狸の置物にスポットを当ててみます。

路上園芸の脇に狸あり

草の陰から、狸

▲草の陰から、狸

植物の脇に佇んだり、草陰から顔を覗かせている狸。動物の狸自体、もともと里山に生息してきたイメージがあるせいか、植物とも相性が良い狸の置物。街角の路上園芸の傍で、全く違和感なく自然と馴染んでいます。

こんなところにも、狸

▲こんなところにも、狸

狸の置物は、「他を抜く」という語呂にも通じることから、商売繁盛の縁起物として、特に食堂や居酒屋など飲食店の軒先でよく見かけられます。おなじみなのは、笠をかぶり、片手に徳利を下げ、通帳を持った「酒買小僧」スタイル。

酒買小僧狸

▲おなじみ丸八の徳利を持った酒買小僧狸

雨の降る晩でも、お酒飲みたさあまり、小僧に徳利をもたせて酒屋にお酒を買いに走らせた姿が元になっているとか。

うーむ、現代の人間に置き換えてみると、何とも複雑な気持ちにもなってしまいますが、とにかくこの愛嬌のある姿が、「酒」に関連する飲食店で、客引きの置物として使われ、その後一般家庭にも広く普及していったそうです。

ホース係として働く狸

▲一般家庭の玄関前にて、ホース係として働く狸

デザインの豊富さと、時を経て醸し出される味わい

壁の隙間から感じる視線

▲壁の隙間から感じる視線

狸の置物の魅力、まずは何と言っても、その表情です。

物陰に潜んでいても発せられる、確かな眼力と存在感。街をふらふらと歩いており、つい視線を感じ振り向くと、そこに目を見開いた狸が佇んでいることも珍しくありません。しかしカッと見開いた目と裏腹に、首をかしげ、ちょっと隙がありそうにも見える微笑みと、たぷたぷしたお腹、そしてぬぼーっとした佇まい。そのギャップにも惹かれてしまいます。

どこにいるかわかりますか?

▲どこにいるかわかりますか?

ミュージシャン狸

▲ミュージシャン狸

さらにはデザインバリエーションの豊かさにも驚かされます。手のひらに乗りそうなミニチュア狸。びっくりするような巨大狸。和風建築に合いそうな狸。現代的でポップな狸。ひとくちに狸の置物といっても、作られた時代や産地などによっても、いろんな表情や風貌をしています。

金ピカの開運狸

▲金ピカの開運狸

路上園芸のキャラを見渡してみても、とりわけデザインがバラエティに富んでいる狸の置物。そのため、レアなデザインの狸に出会えた時は、喜びもまたひとしおです。

たぬき鉢

▲植木鉢ならぬ「たぬき鉢」。相当な年月を感じます。きっと根っこが生えているに違いない。

狸の置物は、いわゆる「昭和」な雰囲気の、昔ながらの民家や飲食店によく置かれており、何十年もその場所に鎮座している、なんて場合も珍しくありません。年月を経て風雪をしのいできた佇まいを骨董的に味わうことができるのも、また魅力の一つです。

新たな創造に挑戦し続ける狸業界

ピンクの手ブラ狸

▲ガチャガチャで入手した、ピンクの手ブラ狸

狸好きが高じ、最近はまとまった休みができるたびに、信楽焼の狸で有名な信楽や、分福茶釜でおなじみの茂林寺、京都の狸谷山不動院など、各地の狸スポットへと赴いている路上園芸学会ですが、お土産物屋さんに立ち寄ると、昔ながらの雰囲気の狸の置物のともに、新しいデザインのものも多く販売されており驚かされます。

また最近では、ガチャガチャのモチーフにもなったりと、新たな動向からも目が離せない狸の置物の世界。

狸好きが高じ……

▲狸好きが高じ……

狸自体、日本ではおなじみの動物で、昔話にも数多く登場するばかりか、「たぬき」という言葉も、「たぬき寝入り」とか「たぬき親父」とか「取らぬたぬきの皮算用」など、しばしば慣用句で使われたりもします。

しかしどういうわけだか、ちょっとずる賢くて情けないイメージが伴うことが多く、その、いまひとつパッとしない感じも、なんだか親近感と愛着がわき、憎めないのです。

もはや日本の文化といっても過言ではない狸の置物。今後も勝手に見守り続けていきたいと思います。

マイ狸

▲信楽狸作りワークショップに参加し、マイ狸まで作ってしまいました

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