島で暮らすという選択

  • 2023年06月01日更新

私たち自身も島国ニッポンで暮らしているとは言え、青く美しい海にポッカリと浮かぶ島で、のんびり暮らすというあこがれを思い描いたことのある人は、少なくないでしょう。離島で暮らす楽しみとはどのようなことでしょうか?あるいは離島で家族が共に暮らすという視点で考えると、どのような問題点があるのでしょうか?

離島暮らしの心得とは

同じ日本の中とはいえ、都会と離島での暮らしぶりは、自然環境も社会環境もまったく違っていると言えます。まずインフラ普及の違いは大きいです。島を管轄する官公庁の所在が同じ島内にあれば、住宅の設備、子供の教育環境などについての心配をする必要はあまりありませんが、移り住む島が小さい場合には、水道や電気といったライフライン、教育・医療、交通機関についての情報や住居を取り巻く環境などを総合的に調べる必要があります。汚水処理場が島内にあるかどうか、水道の水源はどのような状況か、ひいては住居内の水洗トイレの有無、暮らしやすさという点では、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、薬局や病院、自然豊かな環境が故に存在する虫や小動物の存在、果ては娯楽施設の有無など移り住んでからの生活を想定して、細かな情報まで心得た上で、移り住むべきでしょう。悪天候の時など、航空機や連絡船の欠航による交通遮断状態が発生した状況での病気や怪我など、緊急事態の不都合にも考えを及ばせる必要があります。生命に危険が及ぶ病気を患う確率、天候が荒れる確率、冠婚葬祭等の所用で離島から本土に渡る必要がある時に、交通機関が不通になる確率など、問題として発生しそうな事柄にどう備えるかという心構えも必要です。離島での暮らしに感じる魅力と本土では考えにも及ばない不便さを冷静に判断し、前者のポイントがはるかに高いという結論に達すれば、一考の価値がある人生の過ごし方といえるでしょう。

離島暮らしの先輩に聞く

長崎県の五島列島に住む斉藤さん(仮名)は、数年前に大阪から久賀島(ひさかじま)に移り住んできました。大手の銀行員だった彼は、バリバリの金融マンでしたが、子供たちが独立した後、昔から憧れていた離島での暮らしを決心します。まずインターネットで全国の島々について検索しました。不動産情報から候補となる島を探します。最近では大手のサイトでも、離島の不動産情報が掲載されています。選択の基準としては、訪れたことがある島、テレビなどの情報で住んでみたいと思った島などが候補になるでしょう。いきなり鳥さえ通わぬ無人島に住みたいという方もいらっしゃるでしょうが、実際に暮らしてみると都会の暮らしでは考えにも及ばない、想定外が起こる可能性もありますので、初めての離島暮らしとなる候補は、電気水道のインフラが確保され、行政機関が同じ島内にある島が無難でしょう。しかし検索結果で自分の希望に合う島が見つからない場合は、希望の島が所属する行政機関に問い合わせるという手段もあります。斉藤さんの場合は、不動産情報を参考にしながら、問合せた役所から紹介された人のおかげで、廃屋同然の空き家を譲り受け、離島の暮らしを始めることになりました。

この記事を書いた人
中村郁夫

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