【連載】荒廃林の「モンスター化した杉」を整備しながら伐る!「セルフビルド冒険の書Vol.3」@千葉県長柄町

  • 2022年12月03日公開

こんにちは、木こりの源です。

木こりでも大工でもなかった”レベル1のど素人”が、木を伐って、加工して、家を建てる!と無謀にやり始めたものだから、そりゃ大変!
師匠に怒られ、最初はボッチで、やっとできた仲間にはなじられ、失敗を積み重ね…。 5年かけてやっと完成するまでの、貴重なノウハウをここに記していきます。
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連載3回目は、建材に使う杉を手に入れるために、木の伐り方を見ていきましょう。

荒廃林の「モンスター化した杉」を整備しながら伐る!

僕たちが倒すのは、経済的に合わなくなって放置された荒廃林の杉、言わばモンスター化した杉です。

僕の建てた家は、ロフトを入れて100㎡くらいの建物で、短い丸太も合わせて約110本の丸太が必要となりました。 これを伐り出すのに約600㎡の杉林を整備することになります。

我々が木を伐り出す所は、放置されている杉林なので、ジャングルのように人が立ち入れないほど植物が生えてしまっています。 この状態だと動物の住みかになり、獣害の原因になってしまいます。 これを整備しながら木を伐り出します。

立ち入れないほど荒れた杉林、都市近郊のほとんどの杉林がこのような現状 

まずは木を伐る「準備編」から

1.下草や小径木を刈る(モンスター退治で経験値を稼ぐ)

ボスキャラとも言える木を伐るには、まず下草刈りです。 樹間に生えている竹や草、細い木等を刈り払い機、チェーンソー等で刈り、木を倒すスペースを作らねばなりません。 機械の届かない狭い所もあるので、ノコギリやナタも使って手作業で処理していきます。

風で折れた木が、他の木に引っかかっている場合、いつ、どの方向にその木が倒れて落ちてくるか予測が飛躍的に難しくなり、その木を処理するには経験や技術が必要となります。 このような木は、まさにボス近くのモンスター。処理していくと、かなり経験値を稼ぐことができます。

処理した竹や木は、まとめて積み上げておくのですが、これが一苦労、かなりの人手がいる作業となります。

写真右に見えるのが積み上げた竹や木 

ここではパーティプレイが重要なんですね!! 作戦は「みんながんばれ」です。

この日は早稲田大学の環境サークルメンバー5人も手伝ってくれ、計7人のパーティで整備作業 

たった1日、人の手が入っただけで綺麗になる。数の力偉大なり 

2.伐る対象木の周りをきれいにする(ボスの手下を片付ける)

樹間にスペースができたら、ログ材を搬出する際の出しやすさも考慮して、どこからどの順番に伐って行くか作戦を立てます。

まず対象木の周りの草の伐り残し等を処理し、安全に作業するための足場を整えます。

また、木に巻き付いているツタなどは、ロープの役割をし、伐倒方向に影響を及ぼす可能性があるので、あらかじめ切っておく事が重要です。

いざ、伐木!バトルシーンの実況中継

ここまで来て、始めて伐木作業となります。

3.いざ伐木(ボスキャラ攻略)

ボスキャラ退治には、攻略法がつきもの。 木は1本1本生え方も形も違うので、一期一会ですが、伐木作業にはセオリーがあります。 ここで使う武器はチェーンソー、防具は、ヘルメット、チャップス(防護ズボン)です! それぞれちゃんと装備しないと伐木できません。

さー、戦闘開始です!

伐木方向に、「受け口」と言う切り口を作ります。 最初の受け口作りが大事、作戦は「いのちをだいじに」で、慎重に行きましょう。

受け口から垂直方向が、木を倒す方向となります。 最初に小さく切り口を入れて、倒す方向を確認し、微調整しながら木の直径によって、直径の1/4から1/3まで受け口を大きくします。 さらに伐木方向を再確認し、合っていれば受け口は完成です。

小さく受け口を作って伐倒方向の確認、この場合左が伐倒方向 

完成した受け口 

伐倒方向の最終確認 

次に、カケヤとクサビを道具袋から出して準備しておきます。 カケヤとは、ピコピコハンマーサイズのゴム製のハンマーで、クサビとは、プラスチック製の三角形の道具です。

ここからは、畳みかけるようにいきます!! 「ガンガンいこうぜ」に、作戦変更です!

受け口の反対側から、受け口の高さの下から2/3程度の位置に「追い口」という切り口を入れて行きます。

追い口は最後まで切りきらず、木の直径の1/10はツルとして残します。

ツルとは伐倒木をコントロールするために残す部分、ガサガサの部分がツル 

このツルが蝶つがいのような働きをして伐木方向が定まるので、重要な部分となります。

カケヤとクサビを装備して、素早く追い口にクサビを2方向から打ち込んでいきます。

カケヤで交互に叩いてドンドン入れていくと木が傾き、ある程度のところで倒れ始めます。

倒れ始めたら、チェーンソーを持って退避します。 伐倒時に木の幹や枝が跳ねて飛んでくる場合があるので、できるだけ対象木から離れます。

ど迫力の感動!伐木にヤミツキになる魅力とは

木の倒れた時の音と振動は、何とも迫力があるものです。

※【動画】ヨムーノDIY女子部の伐木体験をご覧ください!(長柄町TVで配信中)

ボスを倒したときの感動が蘇る瞬間です!

そして狙った方向に倒れた時の達成感はスポーツに通じるものがあり、体験するとヤミツキになるのです。

杉は伐ってしまうと、広葉樹のように切り株から芽吹くことはなく、そのまま枯れてしまいます。

倒した木は、「葉がらし」と言って、枝葉を付けたまま半年ぐらい乾燥させてから材にします。 ログハウスの丸太は半乾きの状態が柔らかいので加工しやすく、完全に乾く前に家の骨組みとして組み上げます。

ちなみにローカルルールですが、僕たちは感謝の気持ちを込めて、切り株にお水をかけて伐木を終了します。

いかがでしたでしょうか?木こりの世界。
杉を倒してもゴールド(お金)は入りませんが、これを有効利用するという意味では、暴れていたモンスターが仲間になるといったイメージでしょうか!

整備のために積み上げた枝や伐った木を動かすには、重機や膨大なマンパワーが必要です。

効率よく仕事をこなすには、最初の戦略が重要で「パーティプレイ」や「さくせん」が欠かせません。

そんなところは意外と、企業のチームビルディングにも使えそうな体験ではないでしょうか? 体験してみたい方は、セルフビルドサポーター講習で体験できますので、お気軽にお問い合わせください。

今回は、ここまでで Save

次回は、「集材」へ To Be Continued

この記事を書いた人
NPO法人ふるさとネッツ理事/セルフビルドプロデューサー/木こり/移住定住コーディネータ―/長柄町TVディレクター
木こりの源

2017年より、NPO法人ふるさとネッツの理事となり、荒廃林を自ら整備して排出された杉材を使いログハウスをセルフビルド。 このノウハウを活かして、現在は東京と千葉を往復する2拠点生活を実践しながら、「セルフビルドサポーター」の資格制度を作り、多くの地方がめざす地域創生を「林業」から実現する日本初のモデルとなるべく邁進中。

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