「ひとつ屋根の下」にいた大学生が、命を救ってくれた。~高齢者と大学生の、異世代ホームシェア~
- 2023年06月27日更新

血縁関係のない高齢者と大学生が同じ家で暮らす「ひとつ屋根の下」プロジェクトが、東京都文京区本郷で実施されています。高齢者は、子どもの独立や配偶者との死別によって生まれた空き部屋を安く大学生に貸し出し、大学生は、安く借りる代わりにお手伝いをして、高齢者や地域に貢献します。
主催しているのは、NPO法人「街ing本郷(まっちんぐほんごう)」。代表理事であり、創業90年を超える魚屋の三代目である長谷川大さんに、どのような経緯でこのプロジェクトが立ち上がり、どのように運営されているのかを、オウチーノの女性活躍推進担当・清水菜保子がお伺いしました。脳梗塞で倒れた高齢者を、一緒に暮らしていた大学生が早期発見し命が助かった、という事例もあったそうです。
プロフィール
- 街ing本郷 代表理事 長谷川大さん
- 本郷で90年以上続く魚屋「魚よし」の三代目。街ing本郷の代表理事であり、広報担当。様々なところで講演もされています。
インタビュアー
- オウチーノ 執行役員 清水菜保子
- 女性活躍推進担当やってます。食べることが好き。本郷の「菊坂コロッケ」おいしかったです!
「街の魚屋さん」だからこそできた。
―街ing本郷を設立した経緯を教えてください。
一般的に「商店街」のなかには複数の町会があり、道を挟んで向かいでも町会が違ったりまたがったりします。また、本郷という街のなかにもたくさんの商店街が存在します。その商店街・町会の枠を超えてもっと広い範囲の活動がしたいと考え集まったのが、街ing本郷の理事3名です。この3名、普段は魚屋、お菓子屋、薬屋の店主で、それぞれ異なる商店街から集まりました。
街には様々な課題があります。それはここに住んでいたら分かります。しかし、人手が足りません。既に私の代が少ないんですね。ということはこれからもっと少なくなっていく。その将来を見据えてやってきました。
―やはり都心でも人手不足という課題はついて回るんですね…。今はどのようなメンバーで活動されているんですか?
街ing本郷のなかには、地域ブランディング、文人郷プロジェクト、福祉、宅配、防災など複数のチームがあります。住民と、東大生をはじめとする大学生、そして地域外から私たちの活動に賛同して「参加したい」「協力したい」と言ってくださった方とで活動しています。そういった方のなかには、デザイナーさんもいるんですよ。
―だから、パンフレットやチラシのデザインがこんなに素敵なんですね!
はい、5つの商店街を集めた「本郷百貨店」のパンフレットはその方がデザインされ、グッドデザイン賞をいただくことができました。商店街のこういう企画でグッドデザイン賞をとったのは初めてです。
―すごい!それぞれができることを持ち寄って、創っているんですね。
そうそう。他には、お金に携わる仕事をされている人に会計をやってもらったりとか。そういった方たちを巻き込んで増やしていかないと活動はできません。でもやってみたいという人はたくさんいます。私たちの役割は、そういう方たちをつないで活動のフィールドを作ることです。いくら素晴らしい案件があっても、それだけでは形になりませんからね。昔からここにいて、地域の方々とのつながりがあって、地域の事情を知っている私たちだからこそできることだと思います。
「ひとつ屋根の下」、誕生。
―「ひとつ屋根の下」プロジェクトはどのようにしてできたのですか?
私たちは商店主ゆえに、地域の方の住んでいる家のことや、昔と今の家族構成などを把握しています。それが私たちの強みですね。理事は町会の役員も担っているので、非常にたくさんの人のことや地域のことを分かっているんです。
―長くその街にいて、住民と関わりを持ってきた人にしか分からないことですね。
そうなんです。それに加えて、文京区にはたくさんの大学がある。それは、日本のどこにも負けない地域財産だと思っています。しかし、大学生が近くで一人暮らしをするとなると、都心なので家賃が高い。また、一人暮らしの高齢者が増えてきましたが、地域として見守っていく担い手が足りない。となったら、高齢者と大学生が一緒に住めたらWin-Winになって面白いんじゃない?という発想から始まりました。
それと、実は私たちは設立当初から「書生プロジェクト」という活動をしていまして、地域に貢献することを条件に、大学生に格安でアパートを貸していました。これまで7名の卒業生がおり、現在も4名が住んでいます。なので、安く部屋を借りたい大学生がいる、ということは分かっていました。
またこの活動は、高齢者と大学生にとってWin-Winになるのはもちろん、日本の社会に少し貢献できるものではないか思っています。現在、日本は社会保障費の高騰が問題となっています。私たちは医療や福祉の現場に入ることはできませんが、病院に行く必要のない人を増やすことはできると思っています。
―高齢者が大学生と話すことで認知予防になったり、ということですか?
それもそうなのですが、それ以上に、リタイアすると役割や生きがいを失う方が多くいます。私たちはひとつ屋根の下プロジェクトに参加している高齢者の方々に、「大学生の新しい里親になってあげてください」「社会に出る前の大学生を育ててあげてください」とお伝えしています。その結果として、認知症予防や、何かあった時のリスク管理にもなっているのです。
―なるほど!役割があるって、大事なんですね。ただ、やはり赤の他人が同じ家に住むとなるとトラブルも想定されるかと思いますが、どう予防しているのですか?
高齢者と大学生をマッチングするうえで、私たちの役割は両者の間に立つことです。ミスマッチやトラブルがないよう、両者からしっかり話を聞いて、何を求めているのか、どういう方を望んでいるのかを知り、仲介します。マッチングした後も、1ヶ月に1回くらいは聞き取りをしています。また不動産契約は不動産会社を介しており、契約のトラブルを防止しています。
―正式に賃貸借契約を結ばれるんですね。ちなみに、家賃はおいくらですか?
物件によりますが、おおむね1ヶ月の家賃は3万円(別途、水道光熱費が必要)。一般の下宿と違うのは、昔の書生(他人の家に住み込んで雑用などを任される学生)と同じように家や地域へ貢献することが求められる点です。
まずは、高齢者と大学生の出会いの場を。
―具体的にどのような活動をされているのですか?
「ひとつ屋根の下」プロジェクトは2014年から開始しましたが、当初は最初からこの活動に興味のある高齢者と大学生をマッチングしようとしていました。恋愛に例えるならば、いきなり婚姻届を持って結婚相手を探していたようなものです。しかし2015年、2016年は講演や報告会をしたり、高齢者と大学生が一緒にご飯やおやつを食べる企画から始めています。つまり、まずデートをしてみましょう、と。そこで交流が生まれ、「一緒に住んでもいいわ」と思ってもらえたらと思っています。
3月6日に交流会をやったのですが、高齢者も大学生も目をキラキラさせて、とても良い笑顔をされるんですよ!
―本当だ、とっても良い表情されてますね!
しかも、交流会後には「やっぱり1人で暮らしているのはアレだから、誰かと一緒に暮らしたいわ」という方がいらっしゃいました。
また、訪問型の「ひとつ屋根の下」も始めました。一緒に部屋を掃除したり、2人で東大の学食にご飯を食べに行ったり。一緒には暮らせないけれど、そういった活動に参加したい大学生が多くいます。共生がすべてではないので、まずはとっかかりを作っていきます。
―他に、1年間プロジェクトを運営されて気づきはありましたか?
まず、当初は独居老人を対象にしていたのですが、それは「一人暮らしの高齢者は困っているだろう」という私たちの勝手な発想だったのです。今は、ご家族やご夫婦で暮らしている方なども対象にしています。その結果、既に今年は2組のマッチングが決まりました。
また、高齢者と大学生が一緒に暮らすには、やはり完全な同居型は難しく、玄関は同じだけれど生活動線の異なる下宿型の方が上手くいっています。そして、本郷にはその下宿型の家が多いんです。昔から大学がありましたからね。普通に不動産市場に出ている物件ではなく、こういった地域財産を活かしていきたいです。
―大学生を巻き込んだり、下宿型の空き部屋を活用したりと、まさに本郷の特性が活かされた活動ですね。
「ひとつ屋根の下」の課題。
―プロジェクトの課題は何ですか?
今の課題は、法律、確定申告、収入の3点です。
まず法律の面では、自分の住んでいる家に下宿をさせるとなると、許可などの点でグレーの部分が出てきます。そして、高齢者が家賃収入を得るようになれば、金額によっては確定申告が必要になります。また、街ing本郷は今のところ補助金収入でやっているのですが、それ以外の収入がないと続けていくことは難しいです。今後は企業や財団、個人の方、利用者のご家族の方に会員になっていただき会費をいただくなどの方法を考えています。
私は、「ひとつ屋根の下」は本郷以外でもどんどん展開していってもらいたいと思っています。実際にとある自治体から「うちでもやりたい」と言っていただいています。しかし、こういった課題を解決していかないと、広まっていきません。
またもう1つの課題が、本人は同居したいと思っていても、親類による反対が多いことです。
―そうなんですね…。でもたしかに、何も知らないご家族からしたら、不安というのも分かります。
例えば大学生の親御さんであれば、「高齢者の介護をしなければいけないのではないか」「もし高齢者の体調に異変があった時は誰の責任になるのか」、高齢者の親族の方であれば、「どんな大学生が来るのか分からないから怖い」などの声がありました。また、私たちが「よからぬ団体なのではないか…」と思われたこともありました。もっと理解者を増やしていかなければいけないと思っています。
「ひとつ屋根の下」だったから救われた命。
―これまでプロジェクトに参加された方からは、どのような声がありましたか?
これは先日、「ひとつ屋根の下」で大学生と同居していた方からからお聞きしたお話なのですが、ある日脳梗塞で倒れたらしいんですよ、家の玄関先で。でも、たまたま近くに当時一緒に暮らしていた大学生がいて、すぐに発見してくれて、救急車を呼んでくれたと。救急車に乗ってからはもう、記憶がないそうです。ご本人がおしゃっていましたが、もしあの時見つけてもらえなかったら、後遺症残っているか、もうここにはいなかっただろうと。でもすぐに復活されて、後遺症もなく元通りの生活を送られています。
―奇跡のようなお話ですね…。
「ひとつ屋根の下」は何かをしてくださいというばかりではないんですね。一緒にいてくれるだけで、何かあった時に助かることがあるかもしれない。今回の例は、その最たるものだと思います。
取材先
団体名:NPO法人 街ing本郷
代表理事:長谷川大
所在地:東京都文京区本郷4-36-5
HP:http://m-hongo.com/
街ing本郷は文京区本郷地区を拠点として活動するまちづくりNPOです。本郷地区における諸地域活動の支援及び各種イベント等を企画立案、実行し、地域住民の生活基盤である商店街の活性化を支援するとともに、当該地域の街づくり及び地域経済の発展に寄与する事を目的としています。
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