意外とプロも知らない!?【大工の金メダリスト】の秘伝「本当のノミの研ぎ方」を特別解説!"職業訓練校の極意"4ステップ@千葉県長柄町

  • 2024年05月06日更新

こんにちは、木こりの源です。

木こりでも大工でもなかった”レベル1のど素人”が、木を伐って、加工して、家を建てる!と無謀にやり始めたものだから、そりゃ大変!

師匠に怒られ、最初はボッチで、やっとできた仲間にはなじられ、失敗を積み重ね…。 5年かけてやっと完成するまでの、貴重なノウハウをここに記していきます。

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連載15回目は、新章突入前に一息ついて、加工で酷使してきた道具のメンテナンス「ノミの研(と)ぎ方」です。

意外とプロも教われない!?職業訓練校直伝「ノミの研ぎ方」こっそり教えます

僕がセルフビルドをした際に手伝ってくれた仲間の一人、安島 千春(やすじま ちはる)さんは、現在自宅をセルフビルドしながら、NPO法人ふるさとネッツのセルフビルドプロデューサーとして講師をしてくれています。

彼女は家を建てるにあたり、職業訓練校の建築科で1年間、大工の勉強をしてきました。

職業訓練校では電動工具は使わず、徹底的に手動工具の使い方をたたき込まれるそうです。
なかでも重要なのが、メンテナンス!
毎日毎日、ひたすらノミを研いでいたとのことでした。

実はプロの職人さんでさえ、意外と正式に教わる機会が無いと言われる「ノミの研ぎ方」。
私も目からウロコだった、職業訓練校の元大工さん直伝の方法を、ご拝読の皆さまだけにこそっとお教えします!

ここからは、職業訓練校の担当講師から「近辺の代でNO.1の実力」と太鼓判を押された安島さんによる寄稿です。

さっそく、いってみましょー!

安島 千春さんプロフィール

北海道生まれ。飲食業界歴20年、ビーガン料理のシェフを10年勤めた野菜料理人。 現在は千葉県長柄町に移住し、140㎡の豪邸をセルフビルド中。

▼こちらが建築中の安島邸

職業訓練校で〜、元シェフが〜、大工界の金メダリストに出会った〜!!

はじめまして、安島千春です。
突然ですが、みなさんはノミって触ったことありますか?

料理人歴20年超えの私ですが、まさか包丁以外の刃物にこんなにも触れることになるとは、思ってもいませんでした…。

木こりの源さんのセルフビルドを、なんとなく興味本位でお手伝いに行ったら、まんまと自分も家をつくりたくなっちゃったのですw。

「セルフビルドで家をつくる!」と決めたものの、まったくのど素人だった私。
平日5日は「職業訓練校の建築科通い」、土日は「木こりの源さん邸のお手伝い」と、とりあえず建築漬けの1年を過ごして、家づくりの準備をすることにしました。

担任講師はなんと…技能コンクールの金メダリスト!?

その職業訓練校での私の担任講師が、なんと…!
千葉県技能コンクールの金メダリストだったんです!

金メダリスト?って、オ、オリンピックみたい!?

さらには、1級技能士の全国大会、技能グランプリ建築大工職種で5位入賞に輝いたのが、鈴木勝美先生。

鈴木先生の動きには全く無駄がなく、道具さばきが本当にきれい。
中でもノミを叩くその姿! 

ひゃ〜〜美しすぎる…!
みなさんにお見せできないのが残念です。

今回は、そんな先生から1年ご指導いただき、習得した「ノミの研ぎ方」をご紹介します!

研ぎ方…の前に!まずは「ノミの使い方」をご説明

「早く金メダルの技を教えてよ!」
という声が聞こえてきますが、ちょっと待った!

研ぎ方をお伝えする前に、
そもそも「セルフビルドで、ノミって実際どう使うの!?」
「ノミをちゃんと研がないとどうなるの?」
をお話ししておきたいと思います。

ノミが悲鳴!?セルフビルドでは「刻み」「高所・細かい作業」で酷使

私が一番最初にノミをセルフビルドで使ったのは、家づくりの肝と言っても過言ではない、骨組みになる丸太の刻み作業!
木と木のジョイント部分になる仕口や、継ぎ手の「刻み」で使いまくりました!

柱の刻み作業の詳細は、木こりの源さんの記事をご覧ください→こちら

大小合わせて、丸太を約120本は加工したので、週3・4日の稼働で、刻みだけで約7か月。
木を伐るところから数えると、1年半はかかっているかも(汗)。
いや〜、ほんっとに大変でしたw。

他には、
▼足場の悪い高所で、ジョイントが合わなくて調整したり

▼丸のこなどの電動工具が使えない場所で、穴を作らなきゃいけなかったり

いろんな細かい作業に使っていました。

そんなこんなで、酷使されたノミはこんなことに…!

セルフビルドで実際活躍!「ノミ6種」をお見せします

ボロボロになりながらも私を支えてくれている「ノミシスターズ」をご紹介します!

①「叩きノミ」3種

まず、メインは主に家の骨組材や丸太の刻み作業に使いたおした「叩きノミ」。

別名「厚ノミ」とも言われていて、刃の部分が厚く、刃先から柄の部分まで長さが約30㎝ほどあるしっかりボディ。

ボコボコに叩いても簡単には根を上げません。

刃幅は24㎜、36㎜、42㎜の3本柱!
この方達には、本当にお世話になりました~。

②「追入れノミ」3種

その他に、ちょっぴり華奢なボディの「追入れノミ」が3本。

こちらの方達は、狭くて身動きの取りにくい場所や、高所でのちょっとした穴堀り、削り作業など細かい内装作業で絶賛活躍中です!

いよいよ本題!金メダリスト・鈴木先生直伝「ノミの研ぎ方」【準備編】

さーて、お待たせしました!
ここからはついに、金メダリスト鈴木先生直伝「ノミの研ぎ方」をご紹介していきます。

まず準備が必要な、砥石3種類とは

まず用意するのは、砥石(といし)3種類。
荒砥(あらと)、中砥(なかと)、仕上げ砥石。

それぞれ粒子の細かさが違い、番手(ばんて)と言われる、数字が大きいほど粒子が細かくなる番号があります。
一般的には荒砥→200〜600番、中砥→1,000〜2,000番、仕上げ砥石→3,000番以上、といわれます。

え、3種類もいるの!?と思った方、研いでみたらわかります。絶対欲しくなっちゃうから!?

実際、私が訓練校で使っていたのは、こちらの3つ!

▼両面タイプのダイアモンド砥石。
こちらの面は、荒砥の代わりに使ったダイヤモンド砥石400番

反対の面が、ダイヤモンド砥石1,000番

▼中砥の1,000番、仕上げ砥石の3,000番

使う人によって、番手の選び方はそれぞれのようで、仕上げ砥石は5,000〜6,000番を選ぶのが主流とのこと。

数字が大きいほど切れ味も鋭くなるようですが、私は訓練校で使っていた物をいただけたので、仕上げはそのまま3,000番を使っています。

元金メダリストから喝!?研ぐ前に痛恨のミス!

砥石がそろったら、いよいよ”研ぎ方”実践編です!

とりあえず、ノミなんて研いだこともなかった私にまず課された難題。
訓練校で歴代引き継がれる、1年前の先輩が叩きつくしたボロッボロのノミ20本を、一刻も早く切れ味バツグンに仕上げなくてはなりません!

砥石を握りしめ、私は研ぎ場に急ぎました。

「ちょっと、待ったーーーーーっ! !」

ん?告白タイム??
ねるとんを彷彿とさせる鈴木先生の声が、訓練校の作業場に響きわたりました。

「やすじまァァアアー!」
「はいっ!」
「その砥石、まっすぐなのか?」
「…まっすぐ?」
「平らにしたのか?」
「平らになってると思いますけど…」

あッッ!? 
料理人歴20年。包丁を研ぎに研ぎ続けてきたにもかかわらず、私は痛恨のミスをおかしてしまったのです。

砥石を平らに整えることを忘れてしまった…なんてこった…!

金メダリスト・鈴木先生直伝「ノミの研ぎ方」【極意編】

というわけで、気を取り直して!
ミスしないよう、ノミ研ぎの大切な2つの「極意」をお伝えしますね!

ノミ研ぎ達人の極意1:ノミを研ぐ前に砥石を整えよ!

「ノミ研ぎ」の重要ポイント、その1!
「砥石を平らに整えること!(砥づらなおし)」

砥石って硬いと思ってますよね? だって石っていうくらいですから……。
いやいやいや!
石も鋼には敵わないんですよ。

えぇーーーーー!
調子にのって、ずーとっ研いでると、こんな風に真ん中だけ凹んじゃうんです。

そもそもの砥石が平らじゃないと、ノミは絶対にきれいに研げません!
「きれいに研げない」
=すなわち「切れ味も良くならない」のです。

ではまず、初心者の場合は、鉛筆などで凹んだ砥石に線を書きます。

次はダイヤモンド砥石400番を中砥石の上に置き、水で冷やしながら前後に動かし、平らに整えていきます。

こうして削っていくと、線が全部消えたら真っ直ぐになった合図です!

ノミ研ぎ達人の極意2:ノミは「両面」を平らにせよ!

「ノミ研ぎ」の重要ポイント、その2!
「ノミは両面を平らにすること!」

さーいよいよ、今度こそ、ノミ研ぎに突入です!

ノミには「しのぎ面」と「刃裏」があり、「刃裏」が切れ味を左右するとても重要な面です。

刃裏が平らじゃないと、真っ直ぐに切れていかないし、きれいな穴を掘ったりもできません。

金メダリストの鈴木先生も「ノミは刃裏が肝心!」と言っていたのを思い出します。

歴代の先輩方から引き継いだ"おさがり"ノミは、刃こぼれ(刃が欠けていること)していたり、刃先が錆びついていたり、通称「はまぐりっ刃」と言われ、しのぎ面がはまぐりの貝柄のようにな状態が、ほとんど。

これらの状態になると切れ味は最悪!
思いど・お・りには~させないから~♪(byレベッカ)であります。

4ステップで解説!金メダリスト・鈴木先生直伝「ノミの研ぎ方」【実践編】

ノミ研ぎステップ①:刃裏をダイヤモンド砥石で平らにする

最初は刃裏から、ダイヤモンド砥石1000番で平らにしていきます。

これは「裏おし」と言います。
刃裏を下にノミを横にして、ノミの2/3程を砥石にあて、上から押さえ、砥石全体を使って前後に研いでいきます.

裏面が曇った状態から

均一の輝きになったら平らになった合図!

ノミ研ぎステップ②:しのぎ面をダイヤモンド砥石で平らにする

次はしのぎ面です。
刃こぼれや、はまぐりを直していきます。

研ぐ向きは、縦、横、斜め、と人によってそれぞれですが、私は「横」か「斜め」をおすすめします。

なぜなら、面を平らにしやすいからです。
「縦」は、初心者には難しく、はまぐりから永遠に抜け出せない可能性大ですw。

「横」の向きで、ポイントは角度30°!

この状態で、砥石全体を使って研いでいきます。
研ぐ摩擦で熱をもつので、必ず「水をかけながら」です!

刃こぼれがなくなり、しのぎ面が平らになるのを確認し、指のはらで刃の裏を触ってみると…。

おっ!!
指にバリバリッと、ひっかかりのようなものが!?

これを「刃がえり」と言います。

ここまでいけば、しめたもん!

第2ステージに突入です!

ノミ研ぎステップ③:中砥石で刃裏→しのぎ面を平らにする

次は、水に10分程つけておいた中砥石で、刃裏、しのぎ面の両方を上記と同じように研いでいきます。

この時、こまめに砥石を平らに整えながら、しのぎ面を研いでいくと、早い時間で平らになり刃先が均一に光ってきます。

ちなみに、もしノミの状態が良く、刃こぼれなどが無く、切れ味を良くしたいだけなら、いきなり「ステップ③」の中砥石で研ぎ始めて大丈夫です。

そして、指パッチンならぬ、指カクニンで、刃がえりの合図!
いよいよ最終ステージ突入です!

ノミ研ぎ④:仕上げ砥石でピカピカに仕上げる

中砥石と同様、水につけておいた仕上げ砥石を準備します。

ここでワンポイントアドバイス♪

砥石の左右を使って、刃裏、しのぎ面をそれぞれに仕上げていくのがオススメ!

これは、とある宮大工さんがYouTubeで言っていたので、採用させていただくことにしますw。

ノミの裏面を2~3往復、しのぎ面を6~7往復、交互に3回ほど繰り返します。

すると…。
なんということでしょう~! 

ボロッボロのノミが、ピッカピカに生まれ変わりました~!

そして、仕上がりを確認。
これは私が料理人のころに良くやっていた手法。

グーググーグーグ、グーググーーー! 
エドはるみばりに親指を立て、「爪」で仕上がりを確認します。

ちょっぴりひっかかりを感じたら、ノミ研ぎ完了です!
しっかり水気を拭き取り、錆びないように保管してください。

道具の直し方・手入れを学べた職業訓練校に感謝!

最後に、職業訓練校に通ってみて思うこと。

とにかく、道具の直し方や手入れの方法を学べたのは本当に良かったです!
ノミだけじゃなく、カンナ刃の研ぎ方、カンナの台の直し方まで教えていただきました。

大工さんには絶対欠かせない、差し金や墨つぼの使い方はもちろん、鉛筆の削り方まで教えてもらいましたw。
鈴木先生だけではなく、現役の大工さんも臨時講師としていらっしゃったので、いろんな事が聞けて、本当にお世話になりました!

…そんなこんなで、私のセルフビルド家づくり。
現在進行形ではありますが、年内には完成予定となっております!

家づくりの進捗状況など、インスタグラムで発信中ですので、よかったら遊びに来ていただけたら嬉しいです!
▶︎アカウントはこちら

最後まで読んでいただき、ありがとうございましたー!!

この記事を書いた人
NPO法人ふるさとネッツ理事/セルフビルドプロデューサー/木こり/移住定住コーディネータ―/長柄町TVディレクター
木こりの源

2017年より、NPO法人ふるさとネッツの理事となり、荒廃林を自ら整備して排出された杉材を使いログハウスをセルフビルド。 このノウハウを活かして、現在は東京と千葉を往復する2拠点生活を実践しながら、「セルフビルドサポーター」の資格制度を作り、多くの地方がめざす地域創生を「林業」から実現する日本初のモデルとなるべく邁進中。

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