不足しがちな「カルシウム」を効率よく食材からとる方法【医師と栄養士監修】

  • 2023年06月27日更新

こんにちは、くふうLive!編集部です。

近年、健康志向が高まる中、「健康のための食」を意識する人が増えています。

にもかかわらず、日本人は慢性的にカルシウムの摂取量が低く、充足率は約6割。欧米諸国と比べても著しく不足しているといわれているのです。

今回は、私たちの体に必要なカルシウムを上手にとるためのポイントと、積極的にとるべき食材について、産婦人科医師で医学博士の対馬ルリ子先生と、管理栄養士の牧野直子先生に伺いました。

監修者紹介

【産婦人科医師・医学博士】対馬ルリ子[ツシマルリコ]

1984年弘前大学医学部卒業、東京大学医学部産婦人科、都立墨東病院周産期センター医長を経て2002年医療法人社団ウィミンズ・ウェルネス対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座を開業。以来、女性のための総合医療を実践している。2003年に女性の心と体、社会とのかかわりを総合的にとらえ女性の生涯健康を支援するNPO法人女性医療ネットワークを設立 、全国約500名の女性医療者とともに、さまざまな情報発信、啓発活動、政策提言等を行っている。
対馬ルリ子

【管理栄養士】牧野直子[マキノナオコ]

スタジオ食(studio coo)主宰、管理栄養士、ダイエットコーディネーター、料理研究家。 1989年女子栄養大学卒業。大学在学中よりダイエットコミュニケーションズに所属して、栄養指導や教育の啓蒙活動に努める。1995年に独立後、雑誌や新聞、テレビで活躍する一方、生活習慣病やダイエットの栄養指導やメニュー提案、データ本や料理本の執筆、監修など、幅広く活躍。
牧野直子

私たち現代人のカルシウム不足の原因には、食生活の変化が大きく関係しています。

様々な原因がありますが、そのひとつが、日本人の食の欧米化(和食離れ)が考えられます。米や魚介類、野菜などを中心とした、カルシウムが多くとれる「和食」には、カルシウムやその吸収率を高める成分が含まれており、自然に摂取ができていました。

それだけではありません。たとえば、軟水を飲んでいること、小魚や貝類を食べる量が少ないこと、ダイエットなどの理由で乳製品を減らしていること、そして多忙のためにインスタント食品や加工食品を習慣的にとることによるリンの摂取なども、カルシウム不足に拍車をかけています。

<参照資料>
※1:厚生労働省・日本人の食事摂取基準(2015年版)
※2:厚生労働省・平成29年国民健康・栄養調査(P.31)

カルシウムを効率よく摂取するための5つのポイント

1.カルシウムが多く含まれ、吸収率の高い食品をとる

カルシウムは、牛乳や乳製品をはじめ、大豆、小魚、野菜、ナッツ類などいろいろな食品に含まれていますが、吸収率は食品によってさまざま。

効率よく摂取するためには、カルシウムが多く含まれ、かつ吸収率の高い食品を積極的にとるのがポイントです。

カルシウムを多く含む食品とカルシウム量

分類 食品 分量(正味) カルシウム量(mg)
牛乳・乳製品 牛乳 180ml/コップ1杯分 208
チーズ 20g/6Pチーズ1個 126
ヨーグルト 100g/1食 120
バニラアイスクリーム 30g/1ディッシャー 42
乳酸菌飲料 65ml(70ml)/1パック 30
魚介類 ししゃも(★) 40g/2尾 132
丸干しイワシ(★) 30g/2尾 132
さくらえび(★) 4g/大さじ2 80
ちりめんじゃこ(★) 12g/大さじ2 42
しらす干し(★) 12g/大さじ2 25
豆・大豆製品 木綿豆腐 100g/1/3丁 86
豆乳 180ml/コップ1杯 28
納豆 50g/1パック 45
野菜・海藻類 モロヘイヤ 100g/1食 260
小松菜 100g/ 170
ひじき(★) 10g/大さじ2 100
切り干し大根(★) 20g/1食 100
ほうれん草 100g/1食 49
ナッツ類、ごま アーモンド(★) 10g 25
ピーナッツ(★) 10g 5
くるみ(★) 10g 9
ヘーゼルナッツ(★) 10g 0
ピスタチオ(★) 10g 12
ごま 6g/大さじ1 72

★=吸収力を高める「マグネシウム」も含む。
参考資料:五訂増補 日本食品標準成分表

2.カルシウムの吸収を高める食品と組み合わせる

カルシウムがしっかり吸収されるためには、吸収を高める別の栄養素が必要です。一緒に摂ることを心がけましょう。

  • クエン酸
    クエン酸には、カルシウムをなどのミネラルを包み込んで吸収しやすくする「キレート作用」(※)があります。クエン酸はお酢にも少量含まれます。

    ※キレート作用とは…吸収されにくいミネラルを吸収されやすい形に変えて体内に吸収したり、有害物質を排出しやすい形に変えて体外に排出する働き。

クエン酸の豊富な食材

レモン、リンゴ、グレープフルーツ、オレンジなど

  • マグネシウム
    骨、筋肉、神経などで、カルシウムの出入りを調整する役割をしている重要な栄養素。「カルシウム:マグネシウム=2:1」のバランスで摂ると、カルシウムの吸収がスムーズです。

マグネシウムの豊富な食材

魚介類や大豆、海藻類、ナッツ類など

  • ビタミンD
    カルシウムの吸収を高めるには、ビタミンDの働きも必要。
    また、紫外線を浴びることで、体内でビタミンDがつくられます。散歩などの適度な運動を心がけましょう。

ビタミンDの豊富な食材

青魚類や魚介類やきのこ類・卵など

  • ビタミンK
    ビタミンKは、カルシウムと合わせることで、吸収率が上がるといわれています。

ビタミンKの豊富な食材

小松菜や春菊、パセリ、シソなどの葉物野菜や海藻類

  • 良質なたんぱく質
    良質なたんぱく質もカルシウムの吸収をよくします。ただし、摂りすぎはカルシウムを排出する要因になるので注意が必要です。

良質なたんぱく質の豊富な食材

鶏のささ身肉や魚介類など

3.カルシウムの吸収を阻害しないようにする

カルシウムの吸収を阻害するとされている、次の点に注意しましょう。

  • 欠食しない
    カルシウムのみでは、カルシウム不足を防げません。カルシウムをしっかり吸収するのに必要な他の栄養素を補うためにも、1日3食、乳製品や小魚等をバランスよく食べましょう。

  • 塩分、アルコール、喫煙に注意
    過剰な塩分やアルコールは、尿と一緒に体内のカルシウムを排出します。また、過度のアルコールは、カルシウムの吸収に必要なビタミンDの働きも抑制する要因に。喫煙もカルシウムの吸収を阻害します。

  • 加工食品をとらない
    インスタント食品やスナック菓子、清涼飲料水などの添加物として使われることの多いリンは、とりすぎるとカルシウムの吸収阻害の原因に。食べる機会が多い人は、とりすぎないように注意が必要です。

4.「一度にたくさん」ではなく毎日適量を摂取する

カルシウムは体への吸収率が低いだけでなく、加齢とともに腸の働きが弱り、吸収率は下がっていきます。

また、あわてて一度に大量に摂取しても、腸管内にたまったり、体外に排出されてしまうだけですから、毎日×毎食、適量をバランスよく摂取することが大切です。

5.食事から摂ることが難しい場合、サプリメント活用も試してみる

例えば、食物アレルギーや好き嫌いなど、カルシウムを食事からとることが難しい場合には、市販のサプリメントを利用するのもひとつです。
記載された用法・用量を守って服用すれば、摂り過ぎてしまう心配はありません。

その際は、マグネシウムを一緒に摂ることがポイント。マグネシウムを多く含む食材を積極的に摂るか、マグネシウムも一緒に配合されているサプリメントを活用してもいいでしょう。

「1日の摂取基準の半分以下」というカルシウム不足の現状

私たちのカルシウム不足の現状を見てみると、働き盛りの成人(30~50歳)1日当たりのカルシウム推奨量650mg〜800mgなのに対し(※1)、平均摂取量は約437mg(※2)と、とても低いのが現状です。

30~40代の男女に必要なカルシウムの推奨量と実際の摂取量

性別 年齢 カルシウム(mg)
男性 30~39 推奨量または目安量 650
摂取量 435
充足率(%) 66.9
40~49 推奨量または目安量 650
摂取量 447
充足率(%) 68.8
女性 30~39 推奨量または目安量 650
摂取量 421
充足率(%) 64.8
40~49 推奨量または目安量 650
摂取量 445
充足率(%) 68.5

(※2)から抜粋

カルシウムの重要な役割

体内のカルシウムの約99%は骨や歯に蓄えられており、その構造と硬さを維持しています。残りの約1%は、筋肉や神経・血液などの軟組織や細胞内にあります。

この1%のカルシウムこそ人間が生きていくために不可欠なもの。筋肉の働きを滑らかにし、脳や神経の働きを助け、血液の循環や体全体の機能に影響する酵素、ホルモンなどの分泌調整をするなど、様々な役割を果たしています。

カルシウムが不足するとどうなるの?

そんなカルシウムが体内に不足すると、健康にどのような影響があるのでしょうか?

カルシウム不足が起こす不調や病気とその症状

  • 骨の健康障害や骨粗鬆症
    カルシウム不足が続くと、血液中のカルシウム濃度を一定に保つため、骨に蓄えられていたカルシウムが溶け出します。そのため、骨折や骨粗鬆症などの骨のトラブルを引き起こしやすくなります。
  • こむらがえり、手足のしびれ
    血液バランスや血行が乱れるため、足がつりやすく、手足がしびれやすくなります。
  • 肩こり、腰痛など
    筋力が低下するため、肩こりや腰痛などの症状が出やすくなります。
  • イライラ感
    カルシウムが不足すると、脳の血液中のカルシウム濃度も高まります。その結果、脳の神経細胞がうまくコントロールされなくなり、イライラ症状が出やすくなります。
  • 高血圧や動脈硬化
    カルシウムは、血管などの細胞の活動にも大きく影響し、不足すると、血圧上昇や血管の老化を招きやすくなります。

なお、厚生労働省が定めるカルシウム摂取量の上限は、成人1日当たり650mgです(※1)が、サプリメントなどを一度に大量に飲まない限り、通常の食生活で過剰摂取となることはないと考えられます。

参考:厚生労働省「総合医療」情報発信サイト・海外の情報「カルシウムと健康」

管理栄養士がおすすめする!カルシウムをしっかり摂るためのレシピ10選

カルシウム不足が気になる人におすすめのレシピをご紹介!
手軽なメニューで効率よくカルシウムをとることができます。

あさりとトマトのスープ

カルシウム、マグネシウム、鉄分などビタミン、ミネラル類を多く含み、旨味もたっぷりの「あさり」。あさりのスープにお酢を入れるとカルシウム摂取量がアップします。

  • 調理時間:30分
  • カロリー:66kcal

あさりとトマトのスープのレシピを見る

ししゃもの簡単南蛮漬け

頭からしっぽまで丸ごと食べられるししゃもには、カルシウムが豊富。美味しいだけでなく低カロリーなのも嬉しいポイント。

  • 調理時間:10分以内
  • カロリー:202kcal

ししゃもの簡単南蛮漬けのレシピを見る

豆腐と納豆とカリカリじゃこのぶっかけぽん

小さいながらもカルシウムたっぷりの「じゃこ」。カルシウム摂取にぴったりの豆類とじゃこの、歯ごたえまで楽しい組み合わせです。

  • 調理時間:10分以内
  • カロリー :259kcal

豆腐と納豆とカリカリじゃこのぶっかけぽんのレシピを見る

いかがでしたか?
カルシウムは、意識してとったとしても不足しがちな栄養素です。日々のバランスの良い食事を心がけつつ、カルシウムの吸収を高める食材も効率よく取り入れてみてください。

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この記事を書いた人
ヨムーノ 編集部

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