人気料理小説『エスカルゴ兄弟』の絶品メニューを完全再現!「エスカルゴ牧場」がお台場にやってきた
- 2023年06月27日更新
今年8月に発売されて以来、大ヒット中の料理&青春小説『エスカルゴ兄弟』(津原泰水/KADOKAWA)。それに登場する絶品メニューが、東京・お台場で完全再現された。
"ようこそ、私の副業にしてライフワーク、エスカルゴ・ファームへ。家内がご馳走を準備しています"
10月14日(金)、東京カルチャーカルチャー(お台場/運営:ニフティ株式会社)にて開催された『エスカルゴ牧場 2016秋 ~食べて!触れて!乾杯しよう!~』。世界で唯一「ブルゴーニュ種」(ヘリックス・ポマティア)を養殖する「エスカルゴ牧場」の高瀬社長から話をうかがいながら、本場・フランスでも食べられない「ホンモノ」の味を堪能してきた。
人気の「缶つま」新商品も登場。贅沢な魚介類を堪能
イベント当日は、エスカルゴに合う赤ワイン・白ワイン2種類ずつに、缶詰を開けただけでおつまみになる「缶つま」も登場。つぶ貝、ムール貝、新商品のサバのエスカルゴバターなど、贅沢なラインナップだ。
しかし、なぜ魚介類なのか。これにはちゃんと理由がある。
イベントに登壇したのは、プロデューサー・テリー植田、エスカルゴ牧場社長・高瀬俊英、謎のエスカルゴ好きの男・エスカルゴ伯爵(敬称略)の3名。以下、トークの模様をお届けしよう。
虫じゃない!エスカルゴは「陸にあがった巻貝」
▲左から、テリー植田、高瀬俊英、エスカルゴ伯爵(敬称略)。
【高瀬社長】
みなさんこんばんは!大変お忙しいなか、お越しいただきまして、ほんっとにありがとうございます。今日はよろしくお願いします。
【テリー植田】
よろしくお願いします。何かステージにもう1人、変な人がいるんですよね。喋るんでしょうかこの人は。ちょっとご挨拶してみましょうかね。
【エスカルゴ伯爵】
ボンソワール!
そういうキャラなんですね。
えーと、はい、あの、吾輩の名前は、エスカルゴ伯爵である。エスカルゴが大好きで、この場に呼ばれました。どうぞよろしくお願いします。
よろしくお願いします。伯爵は、社長とはどういうつながりなんですか。
小説『エスカルゴ兄弟』を読ませていただいて、「エスカルゴファーム」って名前の施設が出てくるんですけど、そのモデルになっているのが「エスカルゴ牧場」なんですね。ぜひ現地に行ってみたいなと思って、行ってしまいました。もう、すばらしかったですね。
「エスカルゴ牧場」って、どこにあるんですか?
三重県松阪市、高速道路・松坂インターの近くにあります。
「松坂牛」の松坂ですよね。それでご存じの方も多いと思います。今日は「エスカルゴとは?」と、基本の基本から教えてもらっても良いですか。
みなさん、エスカルゴはカタツムリだと思っていますよね。実は魚介類で、貝になります。
いろんな種類があるんですか?
例えばマグロでも、本マグロとカジキがいますよね。エスカルゴにも「グロ・グリ種」や、小さい「プチ・グリ種」という養殖できるのがいて、それがエスカルゴとして食べられています。確かに食用カタツムリです。しかしエスカルゴと言えば、「ブルゴーニュ種」なんです。100年ぐらい前から食べられていて、今はフランスでも見なくなってしまいました。なぜかって、江戸時代から食べ続けて、いなくなってしまったウナギのように。
それを「世界初の完全養殖に成功」って書いていますが、どこに生息していたんですか?
それは教えられません。絶対あきまへん。教えたら獲りに行っちゃうから。実をいうと、僕がフランスのブルゴーニュ地方に行ったとき、1匹もいなかったです。それでヨーロッパ中歩いたんです。どこにいるか全て調べたんですよ。20年かかって見つけた、最後の生き残りです。
社長しか知らないわけですね。
最初、7匹くらい日本に持って帰ったのですが、空港から出ることがきないんですよ。僕は7年かけてやっと国会で受けた許可を持ってるんですけど、税関の人、誰も知らないんですよ。みんな、許可を持ってるって知って、びっくりしちゃったんですね。そこから始まって。
平成5年、国からも認められたわけですね?
これはね、もともとはエスカルゴって、有害動物だったんです。人間に害はないですよ。ただ、放せば田畑の農作物を食い荒らすから有害です。人間が食べるとなると、有用ですよね。その有用動物の指定が、やっと平成5年に取れました。
これで養殖をちゃんとやっていくわけですね。
はい、もうかなり大変でした。文献も何もありませんので、独学です。
エサは何をあげるんですか?
エスカルゴに何が大事かというと、安心と安全です。僕のなかでそれは大豆だったんです。長年研究し、大豆の配合飼料を作りました。人間が食べてもめちゃくちゃおいしい飼料です。しかもこの子らは、3日以上経った飼料は食べないんです。世界一清潔な、繊細な生き物なんですよ。
定番エスカルゴ料理「ブルギニョン」を実食!
お、エスカルゴができたみたいですよ。実は今日、社長の奥さまも一緒に来ていただき、厨房に入っていただいています。
▲エスカルゴ料理のプロこと、社長の奥さまお手製のブルギニョン。
みなさんに最高の状態で食べていただきたくて。オーブンの火加減が難しいんですよ。だから、プロ(妻)に来てもらいました。2個ずつ召し上がってください。今回は「ブルギニョン」という、フランスの代表的な料理です。
ソースが良いですよね。何か酸味があります。
このソースがやっぱり決め手なんですよね?
ええ、これレモンなんです。このソース、家族で作ってるんですよ。いま僕、農業に凝ってて。パセリもレタスも、みんな自分で作ったもので料理をしています。
▲身をパンに乗せ、殻やトレイのなかにも入ったソースをたっぷりかけていただく。貝と言われたら、もう貝の味としか思えない。コリコリの食感、臭みのまったくない味わい。エシャロットなど自家製野菜のソースとも絡まって美味!
サラダもおいしいので、ぜひ牧場で食べていただければ。
牧場では他にも料理がいただけます。アワビとエスカルゴの「ココット焼き」とか。
私が現地でいただいたやつですね。目ん玉が飛び出るくらいおいしくて。アワビもおいしかったですが、エスカルゴはその100倍でしたね。ホームページから注文できます。
え、パッケージになっているんですか。
はい。伊勢丹三越で500セットくらい出したのかな。レトルトじゃないので、産地直送で3日しかもたないんですよ。また、真ん中が「辛子酢味噌」って書いてますね。ワカメとキュウリで、お刺身みたいな感じで食べます。サザエとかみなさん生で食べるでしょ。そういう感覚で食べてほしいです。刺身醤油でもいけます。匂いも何もありませんし、菌も持っていませんので。
▲これが生きた「ブルゴーニュ種」!大きい方が生後4か月で小さい方が1ヶ月の赤ちゃん。肌が透き通るような白さで、お刺身も抵抗なくいただけそう。
シャレにならない維持費。エスカルゴ牧場に行くしかない!
日本でエスカルゴブームがこの先あるかないか分からないですが、どうしても「カタツムリ」「でんでん虫」みたいなイメージがあって、広がりが難しいんでしょうか。
みなさんよくご存じかと思うんですけど、日本って天候も変でしょ。野菜とか米とか採れなくなってきますよね。そしたら昆虫食べるかって、みなさん言ってません?イナゴとかバッタ。でもこの天候不順で、イナゴやバッタも生きてますか?先に死にますよね。なんでなぜそれを食わなきゃいけないのか。まったくそれは間違いです。
▲「ブルゴーニュ種」をてのひらに載せる、高瀬社長の奥さん。
これからの食料としてエスカルゴが価値があるということですね。もちろん食文化を日本で定着させていくのってすごく難しいでしょうけど、その前にエスカルゴ牧場を見学してもらって。
▲「ブルゴーニュ種」の卵。今はトリュフに代わってしまったが、かつて食べられていたころは「世界3大珍味」の一つだったそう。
食べてもらいたいですね。この養殖場って数千万円かかるんですよ、維持費が。これ以上やると家族も大変だし。研究費も毎月、何百万円とかかります。だから鉄工所とかいっぱい会社作って、自分の給料からまかなっています。
▲会場の女性スタッフも抵抗なく手に載せる。
そこまでエスカルゴに情熱を注ぐことになったきっかけは何ですか。
会社を作ったのが20歳で、長者番付に2回載りました。地元じゃ僕のこと知らない人はいないですよ。僕は孫正義さんみたいにね、世界の金持ちになりたいと思ったんです。そこから、いろんなものを模索しながら会社を作っていって、そのなかの1つがエスカルゴだったんです。ある日エスカルゴの殻を見たとき、素晴らしい、ゼッタイ自分の手元で作りたいと思いました。オンリーワンをいつも作りたいんですよね。だから今、この「ブルゴーニュ種」を遺していくのが僕の使命ですね。
小説にも社長が登場されてますよね。この小説も、社長がアドバイスを?
そういうのは全く。実はね、著者の津原泰水先生が書きたいと言ってきた時、嫌だと断ったんですよ。ただ、仲介の方に先生の熱意を何度も伝えられまして。それで、OKすることにしたんです。
これ、いろんな料理が出てくる小説なんですね。
薄揚げのなかにチーズが入ったチーズキツネや、チーズにハチミツをかけたものも。活字で見てもバツグンにおいしそうです。
伊勢うどんも。三重県の要素がてんこ盛りですね。これがドラマ化とかされたら、ご出演されないといけないですね。
僕も年取りましたんでね、テレビは80回目の出演で辞めたんですよ。ガンになって18キロぐらい痩せたんで、その後に出たテレビ見て、自分の変貌にびっくりしました。ショックを受けたの。マスコミ出るような顔じゃないなと。
いや、かっこいいですよ。ぜひ映画に出てください。
申し訳ないが、声も出なくなったんですよ。胃袋を除去してしまって、声が全然出ないんですよね。ただ、今こうして一生懸命語って、みなさん食べていただいて、大変嬉しいです。一生懸命語ります。こうやって広めるのは、僕の営業しかないんですよ。
ぜひみなさん『エスカルゴ兄弟』を読んでいただいて、僕みたいにエスカルゴ牧場に行かれてください。
▲小説を読んだら、伯爵のようにエスカルGO!
僕も月に1回、地元の奈良に帰っているので、今度行ってみたいと思います。
今日はみなさん、本当にありがとうございました。
終わりに
希少な「ブルゴーニュ種」を「遺すのが使命」と語った高瀬社長。ただ膨大な資金が必要で、子どもたちに継がせることもできないと語られていた。
▲よく見たらネクタイもエスカルゴ柄。
「どう継承していけば良いか教えてほしい。みんなが食べることで、何かが変わると思いません?」
そう語った表情は、子どものようなステキな笑顔。とても過去にガンを患って、胃袋を切除された方には見えない。「不死身の超人」という異名もお持ちなのも納得だ。
本場のフランスでも食べられない貴重な「ブルゴーニュ種」が、日本だけで食べられるという事実には驚くばかりだった。広めようにも、日本には「エスカルゴ?カタツムリなんて食べません!」と言う人も、いまだ多いだろう。
エスカルゴ以外にも様々な料理が登場する、おいしい小説『エスカルゴ兄弟』は、そんな偏見を優しくスッと取り除いてくれる希少な一冊だ。まずは本書を手に取り、活字からその味を堪能してみてはいかがだろうか。
編集後記
生きている「ブルゴーニュ種」を見て、まず「デカい!」と一言。しかし次に出たのが「カワイイ!」で、自分でも驚いた。それは自分だけの感覚ではなく、周りにいた女性もみなさん「きゃ~!かわいい~!」と黄色い声を上げていたのが印象的だ。今は知る人ぞ知る食材だが、エスカルゴブームは必ずくる。そのとき「にわか」と呼ばれないために今のうちからファンになっておくのも、恥ずかしいことではないだろう。
(平原 学)
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