知らなきゃ損!「保険料控除」を見逃さないで!所得税を返してもらうテクニック
- 2023年06月23日更新
こんにちは、ファイナンシャルプランナーの鈴木です。
税金の話題になると、必ず耳にする「控除」という言葉。控除にはたくさんの種類がありますが、どの控除にも共通しているのが税金を“税金を安くしてくれる”ということです。
特に、所得控除のなかの「保険料控除」については正しく理解しましょう。
実は「保険料控除」という所得控除はありません。年末調整で提出する「給与所得者の保険料控除申告書」に該当する4つの控除の総称として「保険料控除」という言葉が使われています。
年末調整や確定申告で「控除」をすると、どんなメリットがあるの?
所得税の対象から除く「所得控除」
「所得税」とは、所得に対して課される税金のこと。特定の目的に対して支払ったお金は所得税の対象から除くことができます。これが「所得控除」です。
会社員等であれば、給与から毎月天引きされている所得税は、控除がない状態の所得額をもとに計算されています。これはまだ控除がある状態、つまり本来払うべき所得税額より多い金額を払っていることになります。
年末調整で「給与所得者の保険料控除申告書」を提出するのは、このようにして払いすぎた所得税を返してもらうためです。
ここで大切なことは、自分で「控除」を証明しなければならない点です。
以下で紹介する控除は、年末調整の前に必ず「○〇保険控除証明書」「〇〇料払込証明書」という書類が自宅に郵送されます。
この証明書が「控除」の有無と、その額を証明する手立てになりますので、絶対になくさないようにしてください。
なお、個人事業主や自営業の方は、年末調整ではなく確定申告で「控除」を申請することになります(給与所得者ではないので「給与所得者の保険料控除申告書」を提出することはありません)。
源泉徴収がない場合は「税金が戻ってくる」という形にはなりませんが、確定申告によって計算される所得税は、控除をきちんと申請すれば所得金額が抑えられることがあるので、大事な手続きです。
年末調整で対象となる「保険料控除」の種類とは?
では、「給与所得者の保険料控除申告書」を使って申請する保険料控除の具体的な中身を見てみましょう。該当するのは次の4つです。
生命保険料控除
地震保険料控除
社会保険料控除
小規模企業共済等掛金控除
生命保険料控除
生命保険は契約している保険の種類によって、控除となる種類が以下の3つに分かれます。
一般生命保険料控除:例)死亡保険、学資保険など
介護医療保険料控除:例)医療保険、がん保険、介護保険、就業不能保険など
個人年金保険料控除:例)個人年金保険
また、生命保険は平成24年1月1日以後に締結した保険(新契約)とそれ以前の保険(旧契約)で控除額などの扱いが異なります。
加入している保険が新旧どちらの契約なのかや、1~3のどの種類に属するかは保険会社から年末調整前に送られてくる「生命保険料控除証明書」で確認できます。控除額についてはこのあと説明します。
地震保険料控除
地震保険料控除の対象となるのは、居住用家屋や生活用動産を保険の目的とする地震保険料を支払った場合です。地震保険は、単独での加入はできず火災保険に付帯する形になっていますので、地震保険に入っているかどうかわからない場合は火災保険を確認してください。
地震保険料控除は平成19年に新設された控除です。そのためそれ以前に締結された一定条件を満たす契約は旧長期損害保険料による地震保険料控除が適用されます。どちらも「地震保険料控除証明書」で確認できます。
社会保険料控除
社会保険は、公的医療保険や公的年金、雇用保険などをいいます。
社会保険料控除で対象となるのは、“会社が知らない社会保険料”の支払い分です。
代表的なものは、20歳を超えた子どもの国民健康保険を、親が負担したケースや、未払いだった自分自身の国民健康保険をこの1年内に追納したケースなどです。
どちらの場合も「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が郵送されるので、金額を確認しましょう。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除は、小規模企業共済の掛金、企業型または個人型確定拠出年金の掛金、心身障害者扶養共済の掛金を支払った場合に受けることができる所得控除です。
それぞれの「掛金払込証明書」を見ると、1年間で払った掛金額がわかります。
該当する可能性が高いのは個人型確定拠出年金の掛金ですが、これはiDeCo口座を開設し、この1年間で掛金を拠出した実績がある人が対象になります。
年末調整に必要な「保険料控除」の計算方法や上限について
控除額は、使ったお金が全額控除になるものと、上限額が設定されているものがあります。それぞれ表にまとめてみました。
生命保険料控除
- 新制度(一般・介護医療・個人年金それぞれに適用)
年間の支払保険料等の合計:2万円以下
→控除額:支払保険料等の全額
年間の支払保険料等の合計:2万円超~4万円以下
→控除額:支払保険料等×1/2+1万円
年間の支払保険料等の合計:4円超~8万円以下
→控除額:支払保険料等×1/4+2万円
年間の支払保険料等の合計:8万円超
→控除額:4万円
- 旧制度(一般・個人年金それぞれに適用)
年間の支払保険料等の合計:2.5万円以下
→控除額:支払保険料等の全額
年間の支払保険料等の合計:2.5万円超~5万円以下
→控除額:支払保険料等×1/4+1.25万円
年間の支払保険料等の合計:5万円超~10万円以下
→控除額:支払保険料等×1/4+2.5万円
年間の支払保険料等の合計:10万円超
→控除額:5万円
新旧制度の両方を契約されている場合は、どちらか片方または両方で申告をできますが、全体の限度額は12万円です。
地震保険料控除
- 1.地震保険料
年間の支払保険料の合計:5万円以下
→控除額:支払金額
年間の支払保険料の合計:5万円超
→控除額:5万円
- 2.旧長期損害保険料
年間の支払保険料の合計:1万円以下 →控除額:支払金額
年間の支払保険料の合計:1万円超2万円以下
→控除額:支払金額÷2+5千円
年間の支払保険料の合計:2万円超
→控除額:1万5千円
- 1)と2)両方がある場合
1)と2)それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高5万円)。
ただし、ひとつの契約で地震保険料および旧長期損害保険料の両方を支払っている場合は、いずれか一方の控除のみ適用となります。
社会保険料控除
社会保険料控除は控除額に上限がありません。払った分が全額控除されます。
小規模企業共済等掛金控除。
小規模企業共済等掛金控除は控除額に上限がありません。払った分が全額控除されます。
保険料控除申告書の記入スケジュールと書き方
保険料控除の手続きについて簡単にフローをまとめてみましょう。
10月中旬~下旬
「生命保険料控除証明書」、「地震保険料控除証明書」などの控除証明書が自宅に郵送されてきます。
10月下旬~11月上旬
会社から「給与所得者の保険料控除申告書」が配布されます。
11月下旬
「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入し、会社に提出します。
期限は11月下旬としている会社が多いですが、各会社の指示に従いましょう。
「給与所得者の保険料控除申告書」は、一見、記入するところが多く大変に見えますが、各控除証明書の項目と見合わせれば書き方はそれほど複雑ではありません。
計算で使うのも、単純な足し算と掛け算です。間違いとして多いのは、生命保険料控除と地震保険控除で上限額が決まっている箇所です。
用紙に(最高○○万円)と記載があるところでは、計算によって出てくる金額がその額を超えていたら、最高額に直して次の計算へ進まなければなりません。その点は注意しましょう。
繰り返しになりますが、個人事業主や自営業の人は確定申告で「控除」を申請しますので、「給与所得者の保険料控除申告書」をご自身のものとして使うことはありません。
控除額の上限で保険料控除をおさらい。
それぞれの保険料控除の特徴が少しずつはっきりしてきましたか。
ここでおさらいとして各保険料控除の上限額を整理しておきましょう。
- 生命保険料控除 上限12万円
- 地震保険料控除 上限5万円
- 社会保険料控除 上限なし
- 小規模企業共済等掛金控除 上限なし
生命保険料控除は年末調整した人の72.8%が適用しているとのデータもあります(※)。該当する可能性の高い控除なので忘れずにチェックしましょう。
社会保険料控除は該当する人は少ないかもしれませんが、当てはまったときのインパクトは大です。小規模企業共済等掛金控除はiDeCoへの拠出があれば該当する、とおぼえておきましょう。
戻ってくる金額をズバっとシミュレーション!
さて、最後に、実際のケースを例に、保険料控除によってどれくらいの控除額となるのか、計算してみましょう。
年収400万円のAさん(40代・会社員)のケース
Aさんの今年の控除額は、
・生命保険料控除68,000円
・地震保険料控除16,000円
小規模企業共済等掛金控除168,000円
合計252,000円だったとします。
年収400万円の場合、各種控除を考慮すると所得税率は5%です。
保険料控除によって戻ってくる所得税額を「保険料控除額×所得税率」で計算すると次のようになります。
252,000円×5%=12,600円
これが年収400万円のAさんが保険料控除をすることで戻ってくる所得税額です。
なお、保険料控除は翌年の住民税額を算出する際の課税所得を計算するときにも適用されるため、住民税の節約にもつながっています。
仮にAさんの年収が500万円で所得税率が10%だったとしたら保険料控除によって戻ってくる所得税額は25,200円です。
252,000円×10%=25,200円
年収がもっと多くて所得税率が20%に該当した場合は保険料控除によって戻ってくる所得税額は50,400円です。
252,000円×20%=50,400円
いかがですか。年末調整で「給与所得者の保険料控除申告書」を提出して戻ってくる金額は、意外に見逃せない金額ではないでしょうか。
この機会に、自分が加入している保険料の種類とその目的、払っている保険料の額や控除される額を確認してみるのは、今後の家計を管理するうえでもよい機会になると思います。
今度の年末調整は、ぜひそのような視点をもってチャレンジしてみてください。
出版社で5年、Webメディアで10年の勤務後に独立。独立後最初の確定申告で大きくつまづき、以後、本業のかたわら独学で社会保険、不動産、金融等の知識習得に励む。2018年、ファイナンシャルプランナーに。得意ジャンルは不動産で、実生活では中古マンションの購入、リフォーム、賃貸、売却を経験。やさしい日本語でにっぽんの制度や仕組みを説明する「やさしい にっぽん」を企画・運営。ほか執筆記事にパートだから社会保険に加入したくない。【2022年の条件は?】など。
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