夫婦でも「スマホを勝手に見る」のは違法?LINE・無断撮影・ロック解除の法的リスクを弁護士が解説

  • 2026年10月23日公開

【会社のペンをこっそり持ち帰り…】「これくらい平気でしょ♪」→翌朝、上司たちの“不穏な会話”を耳にして…「えっ、まさか私のこと!?」

こんにちは、ヨムーノ編集部です。

「パートナーのスマホ、気になって見てしまった……」そんな話を、SNSなどで見聞きしたことがある方もいるのではないでしょうか。

夫婦であっても、相手のスマホを無断で見ることに法律上の問題はないのでしょうか。

今回は、そんな「もしも」のケースをもとに、株式会社BestOneの太田垣弁護士に、どのような法的リスクがあるのか、教えていただきました。

※法律上の評価は個別の事情によって異なります。具体的な判断については、弁護士などの専門家にご相談ください。

【もしも、こんなことが起きたら?】夫のスマホに意味深な通知が……見てもいい?

※以下は、法律上の疑問を考えるために設定した架空のケースです。

自宅で過ごしていたときのことです。夫がお風呂に向かったあと、テーブルに置かれていた夫のスマホに通知が届きました。

たまたま画面が目に入り、そこには、

見慣れない女性の名前と、「昨日は楽しかったね♡」「また会いたい。チュッ(笑)」といった意味深な文面が表示されていました。

「え、何これ……」

気になった私は、思わず夫のスマホを手に取りました。

もちろん暗証番号は知らなかったのですが、もしかしたら……と思い、結婚記念日を入力してみることに。しかし、ロックは解除されません。

「じゃあ、車のナンバーだったりして……?」

半信半疑で入力してみると、なんとロックが解除されてしまったのです。

私はそのままLINEのやり取りを確認。気になる部分を自分のスマホで撮影し、保存しました。

あまりのことに、友人にも相談したいと思ったのですが、ふと疑問が浮かびました。

「夫婦とはいえ、勝手にスマホを見たり、LINE画面を撮影したりしても大丈夫だっけ? 法的にアウトだったりする……?」

教えてくれたのは…株式会社BestOne 太田垣弁護士

  • 株式会社BestOne 弁護士・税理士 太田垣佳樹(おおたがき よしき)さん

東京大学法学部卒業。首都大学東京(現・東京都立大学)法科大学院修了。

2013年司法試験合格、2014年弁護士登録。Arden法律事務所の代表弁護士として、相続・不動産・企業法務を中心に幅広い案件を取り扱う。

2022年より東京都立大学法科大学院非常勤講師を務めるほか、2025年に税理士登録。

株式会社BestOne

結論:夫婦でも、相手のスマホを無断で見るとプライバシー権の侵害として「違法」と評価される可能性がある

もっとも、実際に慰謝料の支払いまで命じられる例は多くありません。

重要なのは、「見る」だけの行為と、「保存する」「持ち出す」「他人に見せる」行為とでは、法的なリスクの大きさが段階的に上がっていくという点です。

夫婦間にもプライバシーはある

夫婦には同居・協力・扶助の義務があり(民法752条)、生活空間も共有していますが、だからといって配偶者の私的領域に無制限に立ち入ってよいわけではありません。

夫婦は法律上あくまで別個の人格であり、プライバシー権は互いに保護されます。したがって、無断でスマートフォンの中身を見る行為は、理論上は不法行為(民法709条)に当たり得ます。

一方で、裁判所は、夫婦という関係の特殊性、不貞という違法行為の疑いを確かめるという目的の正当性、生じた精神的苦痛の程度などを総合して判断します。

その結果、「閲覧しただけ」であれば、違法性が否定されるか、認められても損害はごく僅かとされることが多いのが実情です。実務上、スマートフォンを見られたこと自体を理由に高額の慰謝料が認められた例はほとんどありません。

法的リスクが高いのは?5つの行為を順番にチェック

相手のスマホを見るといっても、その行為はさまざまです。ここでは、法的リスクが高いと考えられるものから順に、5つの行為を見ていきましょう。

①取得した内容を家族や友人に見せる【リスク:高】

・民事上: 第三者への開示であり、プライバシー侵害の中核。配偶者だけでなく、やり取りの相手方のプライバシー・名誉も侵害する可能性がある。

・刑事上: 名誉毀損罪(刑法230条)が成立する可能性がある。名誉毀損罪は『公然と』事実を示すことが要件だが、判例上、見せた相手が家族や友人など少人数でも、そこから周囲に広まる可能性があれば『公然』に当たると判断されることがある。また、示した内容が真実であっても成立し得る。

②自分の端末へ転送する【リスク:中】

・民事上: 配偶者の支配を離れて情報が移転し、その後の拡散も可能な状態になる。

・刑事上: 端末を直接操作しただけであれば犯罪は成立しにくい。

③LINEの画面を自分のスマホで撮影する【リスク:中】

・民事上: その時点の情報を固定・複製する行為。

・刑事上: 端末を直接操作しただけであれば犯罪は成立しにくい。

④暗証番号を入力してロックを解除する【リスク:中】

・民事上: 配偶者が施錠して管理していた私的領域に立ち入る行為。

・刑事上: 端末のロックを解除しただけでは不正アクセス禁止法違反には当たらないと解されるのが一般的。ただし、後述の『①ネット経由で相手のアカウントにログインする』のとおり、ネットワーク越しにログインした場合は別。

⑤置いてあるスマホの画面をのぞき見る【リスク:比較的低い】

・民事上: プライバシー侵害に当たり得る。

・刑事上: これのみを処罰する規定はない。

ただし、この順番は、それぞれの行為を比べた場合の相対的なものです。下位に位置する行為であっても違法と評価される可能性はありますので、「この程度なら問題ない」という趣旨ではない点にご注意ください。

最終的な判断は、夫婦関係の実情、行為に至った経緯、取得した情報の内容といった個別の事情によって変わります。

さらに法的リスクが高まる?特に注意したい3つのケース

「スマホを見る」とひと口にいっても、その方法によって法的な扱いが異なります。ここからは、特に注意したい3つのケースについて詳しく見ていきましょう。

①ネット経由で相手のアカウントにログインする

手元にある端末のロックを暗証番号で解除する行為は、不正アクセス禁止法が禁じる『電気通信回線を通じた』不正アクセス(同法2条4項、3条)には当たらないと解されるのが一般的です。

ただし、配偶者のIDとパスワードを使って、自分のパソコンからブラウザ版のサービスにログインしたり、クラウドサービスにサインインしたりすれば、これは同法違反(不正アクセス行為)に当たり得ます(3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。

「相手の端末のロックを解除する」のと「自分の端末などからネットワークを通じて相手のアカウントにログインする」のとでは、法的な扱いが大きく異なります。

②取得した内容を第三者に見せる

ここが最も危険です。

単にスマホの内容を見るだけであれば当事者間の問題ですが、第三者に開示した瞬間、配偶者だけでなく、やり取りの相手方(不倫相手など)のプライバシーや名誉も侵害する可能性があります。

相手方から別途損害賠償を請求されるリスクが生じます。

③GPSアプリを無断でインストールする

位置情報を継続的に取得する行為は侵害の程度が格段に高く、目的によってはストーカー規制法(無承諾での位置情報取得等の禁止)に触れる可能性がありますので、スマートフォンの閲覧とは次元の異なる問題としてご注意ください。

勝手にスマホを見て集めた証拠、裁判で使える?

「無断で取得したものは、裁判で証拠として使えないのではないか」と心配される方もいます。しかし、民事裁判では、著しく反社会的な手段で収集されたものでない限り、証拠として取り調べてもらえるのが実務の扱いです。

そのため、夫婦間で相手のスマートフォンを見て、画面を保存した程度であれば、不貞の証拠として提出することは通常可能です。

ただし、証拠を取得するまでの方法が悪質だった場合には、慰謝料の算定で不利に考慮される可能性があります。

夫婦でもスマホの無断閲覧は要注意!

今回、弁護士さんにお話を伺ったところ、夫のスマートフォンに届いたLINEを見たことだけで、すぐに違法になるとは限らないとのこと。

一方で、その内容を保存したり、第三者に見せたりする場合は、別の法的な問題につながる可能性もあるそうです。

気になるメッセージを見つけたときこそ、その後どうするかは慎重に考えたいですね。

※一部AI画像を使用しております。

この記事を書いた人
ヨムーノ 編集部

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