ログハウスの「快適な間取り」って?建築業界のプロが"秘策"を伝授!【連載】「セルフビルド冒険の書Vol.6」@千葉県長柄町

  • 2023年03月04日公開

こんにちは、木こりの源です。

木こりでも大工でもなかった”レベル1のど素人”が、木を伐って、加工して、家を建てる!と無謀にやり始めたものだから、そりゃ大変!
師匠に怒られ、最初はボッチで、やっとできた仲間にはなじられ、失敗を積み重ね…。 5年かけてやっと完成するまでの、貴重なノウハウをここに記していきます。
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連載6回目は、家づくりのキモ「間取り」について考えてみたです!

ログハウスの「快適な間取り」を建築業界のラスボスが伝授!

我らがNPO法人ふるさとネッツのラスボスこと、中谷 正人(ナカタニ マサト)理事長は、建築界で権威ある雑誌の編集長を歴任した、リアルガチの建築ジャーナリスト。

僕なんぞが建築に関わる何十年も前から建築業界で活躍してきた、伝説の勇者「マト」なのです。
そんなマトが今回、僕の連載に、ありがたくも寄稿してくださいました!

中谷 正人 プロフィール

神奈川県生まれ。有限会社中谷ネットワークス代表取締役、NPO法人ふるさとネッツ理事長、元千葉大学客員教授。新建築社『住宅特集』編集長や『新建築』編集長などを歴任し、現在も建築ジャーナリストとして活動している。

今回は特別にマトがログハウスの間取りを考える時のポイントを伝授してくれます。

ラスボスなのか伝説の勇者なのか、全然まとまらなくなったところで、「マトの間取りの話」いってみましょー!

(絶対あとで怒られるヤツ…!)

ログハウスの建て方は2種類

ログハウスは、建て方によって、壁をすべてログで積み上げるフルログと、柱と梁に丸太を使うポストアンドビームの2種類があります。

フルログにもハンドカットマシンカットの2種類があって、ハンドカットは皆さんがイメージされるように、丸太(ログ)を横に積み重ねたものです。
チェーンソーでログの交差部(ノッチと呼ばれる)を加工するので時間も手間もかかります。
マシンカットは四角く製材された、柱のような木材(これもログです)を積み上げたものです。
機械生産なので材の加工も建てる時間も短縮できますが、仕上がると平らな木の壁のように見えて、丸太小屋というイメージはありません。

フルログには柱がなく、家の角には必ずノッチが必要なので、間取りにはいろいろと制限があり、とくに窓を開けられる場所が制限されてしまいます。

「リラックス・働きやすさ・老後も快適」な家を自由に考えてみる

私たちが取り組むのはポスト・アンド・ビームと呼ばれる工法です。
ポストは柱ビームは梁のことで、柱と梁に丸太を使ったものを言います。

建築基準法では在来工法に分類されるので、見かけは違いますが、一般的な木造住宅と同じだと考えてよいでしょう。
間取りについても一般的な木造住宅と同じように、自由に考えてください。

せっかくログハウスをつくるのですから、リゾート気分でリラックスできる家、そしてリモートワークにも使える家、そして老後も安心して暮らせる、そんな家を目指して間取りを考えてみましょう。

まずは「広いワンルームの家」を目指してみる

ポスト・アンド・ビームのログハウスは、柱と梁に太い丸太(ログ)を使います。

家の中にログがたくさん立っていると、森の中にいるような気持ちになります。そのためにも1階はできるだけ広い部屋のワンルームにするのがよいと思います。

音や湿気の問題もあるので、バスやトイレには扉を付けたほうが無難でしょう。
また、普段使う主な部屋は、アクティヴィティを外に延長できるように、広めのデッキとつなぎ、さらに庭に出られるようにします。
2階建ても可能ですが、総2階にするのではなく、切妻の大屋根を架けて、寝室などはロフト(屋根裏部屋)としたほうがログハウスの雰囲気が出ます。

「リビングルーム」って何のためにある?

そこで、まず誰でも広くしたいと思っているリビングルームから考え始めましょう。
さて、リビングルームは何のためにあるのか、考えたことはありますか?

マンションのパンフレットなどには「部屋はnLDK」と書かれていて、nはベッドルーム(個室)の数を表わし、Lはリビングルーム(居間)、Dはダイニングルーム(食堂)、そしてKはキッチン(台所)の頭文字となっています。

昔の公団住宅は2DKから始まりました。なお、トイレやバスルーム(浴室)などの水回りは表示されていませんが、あって当然だと思われているからでしょう。

リビングルーム以外の部屋は名称から用途がわかります。ところが「リビングルーム」という言葉が良く判りません。
ベッドルームや水回りなど、必要な部屋を取った残りがリビングルームだなどと言う人もいるほど、目的が曖昧な部屋ですが、おそらく家の中で一番広い部屋だと思われます。

でも、それでいいのです。昔の日本の家の部屋は座敷、板の間、奥の間、仏間などと呼び、座布団を敷けば客間、布団を敷けば寝室、ちゃぶ台を出せば茶の間に早変わり。そんな変幻自在な間取りでした。

家具と言えば茶箪笥と意匠ダンス、そして折り畳みができるちゃぶ台くらいしかなく、電気も水道もガスもなかった昔とは違い、今ではテレビや洗濯機、冷蔵庫、システムキッチンなど多くの電化製品が溢れ、立派なダイニングテーブルが置かれて、生活の仕方も変わっています。

「家族室」と命名すれば、使い方が見えてくる!?

そこで、まずリビングルームとダイニングルームをひとつながりにして、名前を「家族室」とでも変えてみましょうか。
家族が食事をし、テレビやゲームを楽しみ、時には子どもたちの勉強の場にもなる、そんな部屋を考えてみてください。
必要なものはたった一つ。大きなテーブルです。

名付けて「何でもテーブル」。 食事、勉強机、カードテーブル、雀卓などなど。何でもこの上でできます。
洗濯物を畳んだり繕い物など、お母さんが家族のための仕事をみんなの前ですれば、お父さんや子どもたちもお手伝いをする気になるかもしれません。

また趣味の模型作りなどもいいでしょう。子どもたちの夢も広がり、積極性が出てくるのではないでしょうか。

一口メモ:リビングから連続してデッキを設けるときには、床の高さを揃えたいですね。窓周りの雨の侵入を防ぐディテールが少し難しくなりますが、使い勝手はだいぶ良くなります。

みんなで料理する「キッチン」

みんなで料理ができる広さをキッチンに求めると、ずいぶんと大きくなってしまいます。キッチンを囲まれた部屋ではなく、オープンにして、いわば広い部屋にキッチン・コーナーをつくる感じがいいと思います。

キッチン周りで動かすことが難しい水栓とシンク(流し)、そしてコンロと換気扇などで、いずれも水道の配管や電気配線が必要です。 壁に接していれば配管や配線をその中に隠せて、すっきりと仕上がります。
朝日の当たる場所で朝食をつくるのでしたら、位置は東あるいは東南になります。

「モノがあふれがち問題」をどうするか?

キッチンには調理器具、調味料、食材、食器など、色々なものが同居しています。
しかし、出しっぱなしにすると雑然としてしまいます。 かといってシンク下や棚などに入れてしまうと出し入れが大変。

最近の調理器具はデザイン的にも美しいものが増えています。調味料などの容器もだいぶ凝ってきています。そうなると綺麗にレイアウトできれば、雑然とした感じにはならず、むしろ部屋の装飾にすることもできます。
ナベやフライパン、ヤカンなどはデザインで選ぶことも大事。

また、調味料などは見えるところに並べると、どこに何があるか一目瞭然ですし、戻すのも簡単です。

こうなると、収納に必要な箱物家具は食器類だけになり、さらに移動式の調理台兼収納棚があると、お料理を運ぶ際のワゴンにも使えて、かなり便利になります。

また、ログハウスに置きたいもののひとつが薪ストーブで、これもシチューや湯沸かしのコンロ代わりに使うことができます。実用性の上からも、薪ストーブはいいですね。

一口メモ:水道管、排水、ガス管、換気扇、エアコンなどの水回りや家電製品の配線などは床下、壁、天井裏に隠されています。とくに水回りは漏ると大変です。できるだけ近い距離に置くといざという時のリスクが減り、メンテナンスも楽になります。ただ、あくまでも使い勝手や室内環境に配慮したうえで位置を決めてください。

文/中谷 正人
撮影/久冨 健太郎

今回は、ここまでで Save

次回は、「建築図面の見方」へ To Be Continued

この記事を書いた人
NPO法人ふるさとネッツ理事/セルフビルドプロデューサー/木こり/移住定住コーディネータ―/長柄町TVディレクター
木こりの源

2017年より、NPO法人ふるさとネッツの理事となり、荒廃林を自ら整備して排出された杉材を使いログハウスをセルフビルド。 このノウハウを活かして、現在は東京と千葉を往復する2拠点生活を実践しながら、「セルフビルドサポーター」の資格制度を作り、多くの地方がめざす地域創生を「林業」から実現する日本初のモデルとなるべく邁進中。

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